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Top 【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】 異形世界・「白狐と青年」 第13話 1/2 白狐と青年 第13話 1/2 ● 「目覚めたかいの、体は大丈夫じゃろうか?」 「……?」 白衣の老人の言葉に少女は目を瞬かせた。 目覚めたばかりの倦怠感に包まれた体を起き上がらせ、見覚えの無い老人を数秒見つめ、次に身の回りの物へと視線をさまよわせた。 自分が居る場所は様々な機械に取り囲まれたベッドの上らしいと少女が認識する間に、 老人は少女が不安に駆られてあちこちを見ていると思ったのだろう、安心させるような笑みを浮かべ、穏やかな口調で言い聞かせるように言った。 「わしは敵ではないぞい。君を健康にしたいと思っておる。異形については分かっていないことが多いんじゃが、君はまた複雑な事情がありそうじゃの」 言いながらベッドの周りの機械をいじっていく老人。しばらくいくつかの機械を見て、「計器的にはOKっぽいかの」と呟くと少女に向かって訊ねた。 「君は信太の森の中にあったカプセルから見つかったらしいんじゃが、よければそんなところになぜカプセルもろとも居たのか、教えてくれんかの?」 目に見える君の衰弱以外に何か問題があるのならそちらにも対処したいしの。 そう言う老人に対して何か答えようと少女は口を開き、 「――……?」 話すべき事柄が頭に思い浮かばなかった。仕方なしに首を振ると、白衣の老人は何かに思い当たったように呟いた。 「もしや、記憶が無いのかな?」 * 窓から差し込んでくる日の光に瞼を震わせ、クズハは過去の夢から覚めた。 ここは研究所内の居住区にある一室、クズハが以前使っていた部屋だ。 記憶のほとんどが欠落していたクズハは平賀に自分が発見された時の状況を説明され、 その言葉を諾々と受け入れながら衰弱していた体を回復させていき、やがてこの部屋を与えられた。 研究区を追われる以前からほとんど私物がない部屋は定期的に手入れがなされているのか部屋の主が居た頃と変わらず綺麗なままだった。 クズハはほとんどない私物の中でも大半を占める本棚へと手を伸ばした。そこには種々の勉強をした時に使った書物がある。 それらの背表紙に指を這わせ、今の世の中を一つ一つ理解していった頃を懐かしく思い、 魔法を本格的に学ぼうと思った理由が無事に果たされている現状に大きな喜びを感じた。 と、クズハは窓の外を見た。陽はもう随分と高くまで昇っている。 「あ、昨日の夜、少し遅かったから……」 そう口にしながらクズハは慌てて衣服に袖を通すと居住区内の廊下を食堂に向けて歩きだした。 そうしながら昨日の事を思い出す。 自分の正体、その存在が多くの人に支えられていた事実。これからも自分を認めてくれる人たちの力になりたいという強い思い。 そして、 傍にいて良いと言ってくれた……。 私はこれからこの思いを自らのよすがとしていこう。クズハは思い、自然とその面に笑みを浮かべた。 自身の回復も完全ではないのに目覚めたクズハの様子を見に来てくれた人。彼女を拾ってくれた人。 森の中、朦朧とした意識の中で最初に感じた彼の感触を、匂いを、声を憶えている。 「がんばろう、もっと」 小さく呟きが漏れた。 食堂の方から彼の声が微かに聞こえて、クズハは銀に陽光を反射する毛が生えた耳をそばだて、小走りに駆けだした。 ● 「それにしても、人に異形の体を……ねえ」 呆れたような色を持って発された彰彦の言葉に匠は首を傾げた。 「知らなかったのか?」 昨日の言動を思い返す限り、匠には彰彦は全て知っているものだと思われた。 そう告げると彰彦はいやいやと首を振り、 「キッコさんが『全く知らんわけでもないだろうて』って言ってただろ? 俺はクズハちゃんが元々人間だってのはキッコさんに聞かされて知ってたけどさ、なんで異形として生きてんのかまでは知らなかったんだよ。 俺りゃてっきりキッコさんがどっかで孤児でも拾ってきてこの子は異形に育てられたのだから異形の子よ! とかのたまってるのかと思ってたんだよな」 おかげで昨日の話にゃたまげた。と茶を啜る彰彦。 二人は朝食を摂る為に出てきた食堂で鉢合わせしてからずっと昨日の事を話し合っていた。 互いに誰かと話して自分の中で情報を整理したかったのだろう。 ひとしきり話し終わると彰彦は唐突に訊ねた。 「で? どうよ」 「なにが?」 せめて主語を言えと返すと、「そりゃ……」と彰彦は何か言葉を探し、 「いろいろと知って、どうなのかってことだよ」 「随分と曖昧だな」 そう答えながら、匠は彰彦の言葉を思案した。 昨日、話を聞いてしばらくの間呆然自失としていたクズハを思い出す。 放っておくとそのまま壊れそうで、つい声をかけずにはいられなかった……。 「……少し、クズハに聞かせるには早かった気がしないでもないかな」 「だろ?」 我が意を得たりと彰彦。 「もうちょい大人になるまで待っても良いって思ってたんだよ」 匠はキッコ相手に同じような事を言っていたのを思い出し、確かに……。と思い、「でも」と苦笑した。 「それだとたぶんクズハがまた自分が人を襲うんじゃないかと気にして精神的にきつくなってたと思う」 「キッコさんがクズハちゃんにちょっかいかけなきゃ問題無かったんじゃねえか?」 「それでも俺がクズハを知らないうちに追い詰めてた」 「あー、そういやキッコさん、んな事言ってたな」 「一応クズハには気を遣っていた、つもりだったんだけどな」 ……難しい。 思い、深いため息交じりに頭を垂れた。 空気を変えるように彰彦が「そういえば」とわざとらしく口の端を楽しげに歪める。 「昨日のあれ、面白かったぜ?」 「あれ?」 さて、何か面白い事などあっただろうか? 昨日はクズハの事を聞いて色々と精神的に大騒ぎで面白い事は特に無かったはずだ。 キッコの人化には驚いたが……。 匠が考えていると彰彦が嬉々として話しだした。 「あれだよ。お前キッコさんとクズハちゃんの事で揉めてたじゃねえか。 クズハちゃんを危ない目にあわせたくなくて寂しがらせてキッコさんに付け込む隙を与えた匠と、保護しておいてその体たらくはなんだと責めるキッコさんの図」 「ああ、あれか……」 思わず渋い顔をする。 「あれな、家庭を疎かにして姑に叱られてる駄目な男って感じに見えたぜ?」 彰彦の言葉に匠は渋面を濃くした。小さく告げる。 「……姑怖過ぎだ」 ちげえねえ、と彰彦が笑い、お、と何かに気付いたような声を上げて手を振った。 「クズハちゃーん」 彰彦の視線の先に目を向けるとクズハが小走りにやって来ていた。 小さく息を切らしたクズハは「おはようございます」と頭を下げる。 少し前に起きたばかりなのだろうか、寝ぐせがついた長い髪が頭の動きに合わせてサラサラと流れる。 「おはよ、昨日は大変だったな」 彰彦が労うように言う。 「いえ、私はもう大丈夫です。私よりも、宴会の方が大変だったんじゃないですか?」 「あー、あれな……」 たははと笑う彰彦に匠が半目を向けて深く頷く。 「まったく、飲みたいだけだったろ。お前たち」 昨日、クズハが笑みを見せたタイミングを見計らってキッコが「匠もクズハも色々と知ったことだしの、記念に宴でもしようぞ」と言い出した。 「二年振りの帰郷祝いも兼ねてじゃな!」 そう平賀も賛同し、 「キッコ、待つんだ」 「平賀のじいさんもちょっと待て」 「まあいいんじゃねーの? せっかくだしパーっとやろうぜ? パーっと! なっ!」 「……え、あ……はい」 反対意見はあっさり棄却され、結局なし崩し的にささやかな宴席が設けられていった。 「まあ、そんな派手な宴会でもなかったじゃねえか。匠もクズハちゃんも飲まなかったし」 「規模は確かにささやかだったはずなんだがな……」 彰彦に匠はため息交じりに返す。 たった六名、しかも飲む気にはなれなかった匠とクズハ。 飲んだ末に起こる事態を予測していたのだろう明日名の三名は酒には手を出していなかったのにも関わらず、 気が付いたら周囲にはダース単位で酒瓶が転がっていた。 「……キッコ、平賀のじいさん、彰彦のせいで妙に大変だった」 結局日付が変わるまで酒飲みたちに付き合う羽目になった匠達は朝が遅くなっている。 「そのくらい許せ」 落ち着いているくせにどこか気位の高そうな声が背後でした。振り返ると笑みを浮かべたキッコと明日名が居る。 「やあ、おはよう三人共」 それぞれに挨拶しながら困り顔をする明日名。 「昨日は本当に迷惑をかけたね」 「いや、迷惑かけたのはそこの女狐とチャラい野郎だから」 「どこからどう見ても人間の美女に向けて何を言うか」 「俺のどこがチャラいよ?」 「キッコのそれは変化だろ。彰彦はそのチャラチャラしてるネックレスやらピアスやらをどうにかしてから言え」 えー。と文句を垂れる二人をとりあえず視界から外す。その様に明日名が微苦笑した。「平賀博士から言伝だ、念のための検査があるからクズハは来るように。とのことだよ」 検査という言葉にクズハがピクンと反応した。少し硬い声で「はい」と返事をする。 「了解。じゃあ行こうか」 匠が立ち上がろうとし、 「わざわざ立ち会うようなものでもない。≪魔素≫の流れを見る役をするついでに我がクズハに付き添おう」 キッコが匠を遮るように言い、そのままクズハの背後まで歩み寄り、その背にしなだれかかって頭に顎を乗せた。 「わ」 「相も変わらず好い感触だの」 キッコの金髪とクズハの銀髪が混ざる。胸に押し潰されて呻いているクズハを露わにした尻尾で巻きつける。 「えーと、キッコさん、やめてくださいませんか?」 「よいではないかー」 クク、と喉の奥で笑いながらキッコは機嫌よさげにクズハを撫でまわす。 見かねて何事か言ってやろうと匠は思い、 「じゃあ、任せようかな。でもクズハが困っているからそれはやめるように」 今度は明日名に先を越された。 「その間、俺達は外で適当に食べ物でも仕入れてくるよ。坂上君も今井君もそれでいいね?」 そう言って明日名は匠と彰彦の肩に手を置く。 匠はキッコにクズハを任せる事に微妙に不服を感じながらも頷いた。
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更に一月が経った。 目が覚めた頃の季節はまだ秋になりたてだった。 今では病室の窓からみえる景色も、空気の臭いもすっかり冬になっている。 憂「おねえちゃん。今日は寒くなってきたから、毛糸の腹巻持って来たよ♪」 相変わらず憂は毎日病室に来て、わたしの世話をしてくれている。 「ありがと~、憂♪」 憂からもらう、少し気の抜けたプレゼント。 嬉しい。 リハビリ病棟に移ってからは、両足のリハビリに励むことになった。 妙な言い方になるが、わたしの両足はかなりキレイに折れていたらしい。 骨の回復もはやく、わたしの足は順調に治っていた。 これだとリハビリの頑張りしだいでは、今年中には退院できると医者は言う。 それでもリハビリを始めた当初は、激しい痛みと倦怠感との闘いだった。 自分は特別不幸な存在だと言い訳をして、この苦痛から逃げ出したくなる。 自分には、両足で立って歩いていた記憶などない。 それならいっそ一生車椅子でも、いいんじゃないか?と自分に言い訳する。 そういって挫けそうになるとき、憂は何度も側にきて支えてくれた。 自分に言い訳はできても、憂にだけは言い訳はできない。 あの日、目が覚めたときに、憂のつぶやいた言葉を思い出す。 「わたしの、たった一人。大切な姉妹……」 愛しい憂。わたしの可愛い妹。 リハビリ生活を通じて、わたしの憂に対する想いは大きくなっていった。 そして、支えてくれているのは憂だけではない。 軽音部のみんなと和。 面会が許可されてから、彼女達は数日に1回のペースで会いに来てくれている。 毎度のことながら、彼女達は病室で賑やかに雑談する。 そして、たまにリハビリの手伝いもしてくれた。 彼女達の賑やかさには救われる。 楽しくて、余計なことを考えずに済む。 なにより彼女達は きっと今までも、平沢 唯はこうしてみんなの助けを得て生きてきたのだろう。 「ふふふっ」 まるで、かつての平沢 唯になったかのような感覚に、自然と笑い声がでる。 ―リハビリは順調に進んでいった。 男「立ち上がってみて」 「はい」 車椅子を支えに、わたしはなんとか立ち上がる。 男「うん。いや、すごいな」 医者は素直にわたしのリハビリの成果に感心する。 男「歩いてみてくれる?」 ゆっくりと、わたしは自分の足で、一歩、足を前に出そうとする。 「あっ」 しかし、片足を前に踏み出しせるほどには、腰と足の感覚はまだ戻ってなかった。 わたしはバランスを崩して倒れそうになる。 憂「おねぇちゃん!!!」 憂がわたしの肩を支えて、姿勢を元に戻してくれる。 男「まだ、日常生活を送るには松葉杖は必要か」 そう つぶやいた医者は腕を組んで唸り声をあげる。 憂「あ、あの……お姉ちゃんは、どこか深刻なんでしょうか?」 震えた声で医者にたずねる。 今にも泣きそうな顔をしている憂を見て、わたしも泣きそうになる。 男「あぁ、いやいや。逆だよ」 医者はあっけらかんと答える。 男「そろそろ、退院の時期も具体的に考えないとね」 そういって医者はカルテになにか難しそうな言葉を書き始める。 男「入院生活や生活態度を見ると、君の記憶障害は、日常生活をおくるのに、問題は、なさそうだけどね」 もったいぶった話し方をしながら、カルテを見つめ、溜め息をつく。 男「まぁ、記憶障害の件は専門の先生の意見もきかないといけないが」 男「2、3歩。歩けるようになったら、ていうのを……当面の退院の目安にするか」 そういって、医者はわたし達に笑顔を向けた。 既に溢れんばかりの笑顔だったわたしに向かって 男「退院とはいっても、しばらくは自宅から通院してもらうよ?」 医者は笑顔で釘をさす。 診察室をでた後。 そこで、わたしは遂に我慢できずに声をあげて喜んでしまう。 「やったー!!!」 そうだ!わたしが歩けるようになれば! これからは、憂と一緒の家に帰ることができる! これからは、みんなと同じ学校に通うことができる! そして、もしかしたら自宅に帰ることによって記憶が戻るかもしれない! 「やったね!憂!」 わたしはこれまでにない誇らしい気持ちだった。 「やったね!お姉ちゃん!」 憂もまた、満面の笑みをわたしに向ける。 その目にはうっすらと涙がにじんでいた。 「もう!憂ってば泣くのはまだ早いよ?」 わたしは憂の目尻の涙を拭いながら言う。 憂「そうだね、まだ早いよね……」 憂は少し落ち込んだ顔になる。 その表情にわたしは狼狽する。 「ちょっ、ちょっと憂。そんなに落ち込まないで!」 憂はいまだに下を向いたままだ。 「わ、わたし頑張るからね!すぐに家に帰れるように、わたし頑張るから!」 憂「違うの」 憂はもう、さっきの笑顔になっている。 憂「また、2人で、家に帰って、学校いって。いままでみたいに一緒に過ごせるんだと思うと」 憂「ただ、嬉しくて……」 『いままでみたいに』 憂のその言葉で、わたしが忘れかけていた黒い罪悪感が蘇る。 憂がいっしょに家に帰りたいのは、『わたし』なのか? 憂「おねえちゃ~ん?」 慰めるように、若干甘い声で憂が声をかけてくる。 気付けば、わたしの目にも涙が溜まっている。 憂「ふふふ、おねえちゃんも今から泣いてるよ?」 憂はそう言って わたしが憂にしたのと同じように、わたしの目尻の涙を拭ってくれる。 その行為で、逆にわたしは涙が止まらなくなる。 ―憂が側にいてくれるだけで、わたしは頑張ることができる ―憂が笑ってくれるだけで、わたしは幸せになる 「ゴメン、ゴメンね?わたし、頑張るから……頑張るからね?」 このとき、遂にわたしは心に決めた。 わたしのこの足で歩けるようになったなら……憂に、この想いを告白しよう。 記憶のない、わたし。 今までの、平沢 唯じゃないわたしだけど、貴方が好きですって伝えよう。 「……頑張るからね!」 わたしは、最後に強く憂いった。 憂「……」 憂は黙っている。 もしかしたら、わたしの決意が、想いが、伝わってしまったのかも。 憂は少ししてつぶやく。 憂「あんまり、頑張って、早く退院されるのも困るかも……」 「え?」 憂、なにを言ってるの? 憂「実は、あまり家の掃除してなくて」 憂「けっこう散らかってる……かな?えへへ」 憂は悪戯っぽく笑った。 それから数日後 ―わたしは、眠る間も惜しんで、リハビリをしていた。 今日もまた、リハビリルームで1人、黙々と屈伸をしている。 憂はまだきていない。 リハビリに熱心になりすぎて、着替えの服を忘れていたのだ。 憂「汗、かきすぎて、風邪をひかないようにね?」 そう言い残し、憂は家に着替えを取りに行っている。 そこに、軽音部のみんながやってきた。 律「よっ、頑張ってるな!」 初めて病室に入ってきたときとは違って、あっさりとした挨拶。 「りっちゃん」 澪「憂ちゃんに聞いたぞ?歩くことができたら、退院なんだって?」 いつも律にいれるツッコミとは違って、優しい声で話しかけてくる。 「澪ちゃん」 紬「はい、唯ちゃん、すごい汗かいてるわよ?」 そういって、ふわふわのタオルをだしてくる。 「ムギちゃん」 梓「わたし達も手伝わせてください!」 ふふふ、やっぱり生真面目なコなんだね。 「あずにゃん」 和「まったく、着替えの服くらい電話くれればとってくるのに」 なんだか、いってることがお母さんみたいだよ? 「和ちゃん」 みんな、憂と一緒にわたしのことを支えてくれた。 そうだ。みんなにも、わたしの決意を伝えておかなきゃ。 「ねぇ、みんな。聞いてくれるかな?」 ―わたしは問う。 「わたし、記憶を失くして、前と変った?」 軽音部の面々は、少し困ったような顔をした後に笑顔で答える。 律「少しだけ、雰囲気がちがうな」 澪「あぁ、記憶を失くす前より落ち着きがある……かな」 紬「そうねぇ~大人しくなったかも」 梓「以前よりしっかりしてます!」 和「……胸が大きくなったわね」 澪「和……」 和「あら?」 ……そうか、やっぱり平沢 唯にはなれなかったか。 「そう、わたしは、もう記憶を失くす前の平沢 唯じゃないの」 「記憶を失くして、自分を失くして」 「空っぽの人間だった」 「でも、そんなわたしでもこの2ヶ月の間にいろんなこと考えて、耐えて、経験して」 「みんなとも、友達になって」 「そして、人を好きになったの」 また、自然と涙が溢れてくる。 「わたしね、憂が、あのコのことが大好きなの」 「わたしが歩けるようになったらね、この気持ちを伝えようと思うの」 「この気持ちはこの2ヶ月間で得た『わたし』だけのもの」 『自分は、もう記憶を失くす前の平沢 唯じゃない』といった。 みんなの記憶の中の平沢 唯は、もうどこにもいないのだと。 そう言ったのだ。 その事実に、軽音部の面々はショックを隠し切れないようだ。 当たり前か。 わたしはずっと騙してきたのだ。 それで、支えてもらっていたのだ。 「ごめんなさい。平沢 唯じゃなくて」 「ごめんなさい。平沢 唯になれなくて」 しかし、決めたのだ。この想いを伝えると。 これ以上、『わたし』の友達を騙したくない。 これ以上、『わたし』が大好きになった人たちに嘘をつき続けたくない。 伝えなきゃ。 全てを告白すると。 平沢 唯がいなくなり、『わたし』がかわりになったことを。 きっとあのコは許さないだろう。 それでも、もし。 もし、許してくれるなら。 『わたし』はあのコを愛していると。 全ての事実を告白するんだ。 自分でも狂気じみていると思う。 自分よがりな、自己中心的な考えだと思う。 この2ヶ月間、支えてくれた友達を無為に傷つけた。 これからわたしは、最愛の人を傷つける。 その先にあるかもしれない。 あの、黒い罪悪感の無い、真実の愛を手にするために。 憂が『わたし』を許したとき。 憂が『わたし』を愛したとき。 憂はそのとき、妹じゃなくなる。 憂はそのとき、恋人になる。 そうだ、きっと憂は恋人になるよ。 きっと妹じゃなくなる。 「だって、わたしの妹がこんなに可愛いわけがないもの」 ―あ、歩けた =終わり= 19
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328 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2012/11/14(水) 01 15 07.26 0 一人の小悪マイマイ ●●君をあしらった帰り道。 一人でチロリと舌を出し、唇を舐めて口の中をなぞると もう飲み込んだ精液の味が蘇るような気がする。 自分に想いを寄せてくる男をあしらった後、 こんな日はどうしようもなく身体が火照る。 まるで雄の匂いで、まだ発達途上の自分の中の雌が目覚めるのかもしれない。 こんな日は悩む前に早く帰ってしまおう。 ピンポーン、ガチャリ 「ただいまー」 「おかえりなさ~い」 「ママー、ご飯まだ~」 「まだ全然よ~」 「じゃあ汗かいたから先お風呂行くね~」 廊下から居間の母親に向かい大きく声を掛け確認すると 早々に部屋に戻りカバンを投げ出すとベッドに大の字に倒れこむ。 目を瞑ると色んな事を思い出し、色んな考えが頭をよぎる ●●君との性行為(未遂)の熱さと硬さ、 吐き出された精子の味と匂い… ●●君の赤い顔、青ざめた顔… 寄せられた想いを無下に断った罪悪感のような気持ち、 そして一瞬脳裏をよぎる、普通の学生なら味わえたであろう 甘酸っぱい恋愛をする幸せ… 自分ひとりでは消化しきれない複雑な物が頭と身体に渦巻く 331 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2012/11/14(水) 01 44 53.82 0 「あーっ、もーっ! こんな時はスッキリしちゃお!」 ガバッと飛び起きるとタンスを開けて 着替えと美容用品入れの少し大きなポーチを引っ張り出し 早足で風呂場へと向かう。 服を脱ぎポーチを持ったまま風呂場へ行くと ポーチは風呂の蓋に置きシャワーを熱く設定して頭から浴びる。 悩みも身体の熱さも流してしまえばいい。 熱いシャワーに打たれると少しモンモンとした気持ちが流れたような気がした。 ひとしきり身体を洗うとポーチに手を掛ける。 美容用品が入るには少し大きな防水のポーチを空けると 美顔ローラーやツボ押し、乳液などの美容用品が詰まってるが それらを手早く風呂の蓋の上に広げていくと 底の方はタオルが敷かれ隠されてる部分がある。 今日はそちらに用がある。 有体に言えば隠してるのだ。 タオルに隠された底からガチャガチャ出てきたのは クリアカラーやポップな色合いでツルリとしたデザインの可愛らしい器具が幾つか。 一見女の子らしく見えるそれらは分かる人が見ればすぐ分かる物、 アダルトグッズ、秘蔵のオモチャ達だった。 マイマイが一人で慰めるののを覚えたのはもう昔だったが 耳年増や経験豊富な友達、ハローの先輩、ファッション誌のコーナーなどで そう言う物があるのを知り、男の想いをあしらうのを覚えた頃には 一人遊びもより激しくなり、オモチャに頼るようになっていた。 化粧品と並ぶボトルをひとつ取り、中身を手に出すと 透明度の高い液体がドロリと零れ落ちる。 性感マッサージに使うローションだった。 溢れる液体を両手で胸元から腹、下腹部、内腿へと塗りつけていく。 冷たいローションが火照った身体から熱を奪い、 摩擦が無くなったかのようなツルリとした手触りが心地良い。 337 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2012/11/14(水) 01 59 22.08 0 ひとりきりローションを塗ると自らを愛撫していく。 最近膨らんできた胸…少し前まではまったく大きくならないのか心配したが ここの所ようやく女性らしくなってきた。 薄く付いた脂肪を両端から寄せ上げ、丸く円を書くように揉む。 ローション越しにツルッとした感触で手の平が乳首を擦ると 徐々に快感を感じ、マイマイの小さく淡い色をした蕾のような乳首が硬さを帯びはじめる。 胸を揉んでいた手は指先で硬くなった乳首を執拗に攻め立てる動きに変わっていく。 男性器を弄んでいた卑猥な意地悪さを自らに発揮し 時に強く、時に焦らして快感を得ようとするマイマイ。 女の子同士を想像する事もある。 まだ見ぬ恋人に触られてるのを想像する事もある。、 今日はその顔の見えない恋人が一瞬●●君の顔になり またフラッシュして考えられなくなっていく。 身体の熱さから逃げるように激しくするほどマイマイの身体は熱くなっていく。 胸の快感がたまらなくなる頃、その手は下に下がっていく。 薄い志望の下にしっかりした筋肉が付いた自分の身体。 肋骨から腹筋をなぞり、自分のシェイプ具合を鍛え具合を確認するかのように 指先で自分の身体を感じながら両手は下腹部にたどり着く。 最初は閉じた足の間に滑り込ませ指先でなぞる。 貯まったローションか溢れた蜜かが手を出し入れする度に 粘性の音を響かせる。 グチュ…チュプ… 外側だけを撫でるような弱い快感にもどかしくなると マイマイは両手で自分の足をグイッとM字に広げると 誰も居ない風呂場でマイマイの女性器が露にされた。 340 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2012/11/14(水) 02 15 16.30 0 ごく薄い茂みが生えた丘の下では既に固くなったピンクの蕾。 一人遊びに慣れた為か真珠のような顔を見せている。、 割れ目は僅かにほころび、花弁のような襞を見せてたが こちらは堅さを残しているようだった 「…ハァッ…ハァッ…」 マイマイはローションまみれの手で 蕾を性器ごと捏ねるように激しく愛撫する。 「アァッ…ハッ…ハッ…」 マイマイの息が荒くなっていくともう一方の手で 蕾の皮を押し開き、真珠のような部分をむき出しにして直接刺激しだす。 先ほど弄っていた男性器ような堅さで勃起した箇所を マイマイは男子を射精に導くような激しさで執拗に刺激した。 して欲しい事を男達にしてるのか、 男達で慣らした主義を没頭するように自分に奮うのか。 自分では分からないまま下腹部の熱さだけがリアルだと言わんばかりに マイマイの自らを攻め立てる指は激しさを増していく。 「ンアッ…ハッ…イクッ…!」 快感に腰を浮かせ性器を突き出すような姿勢になる。 本能的に快感から逃げようとしてるのか分からないが 攻め立てるのも自分なので当然逃げる事は適わず マイマイの身体を快感が稲妻のように走る。 「…ハァ・・・ハァ…」 マイマイは軽く絶頂に達したが、何度もイケてしまう体質は 一回の絶頂では満足できないのだった。 しばし余韻に浸り息を落ち着けるとマイマイは 風呂の蓋に置いておいたお気に入りのオモチャを手に取った。 383 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2012/11/15(木) 00 18 08.45 0 マイマイが肛門を使ったアブノーマルな自慰を覚えたのには理由があった。 マイマイは物心付いた時からアイドルとして生きて来た為に アイドルでない自分も考えられなくなっており、 スキャンダルで身を崩す先輩を見ては恋愛をタブーとして己に課していた。 次第に成長するとタブーになるものがもう一つ増えた。 それが自らの処女性だった。 事務所では禁止されてたがインターネットで アイドルファンの話題を覗き見る事もあったが 熱愛が発覚した時の男性ファンの手の平の返し方には そら寒い物を覚え、それは思春期を迎える前のマイマイに深く刻まれた。 処女の喪失は身を崩す事だと刷り込まれたマイマイに取って 処女を失う事は第二のタブーであり、 自慰であっても挿入する事はうすら怖い物を感じていた。 思春期を向かえ自慰を覚えた頃、 より過激な気持ちで雑誌やインターネットから覚えた物は ひとつは男性のあしらい方で、もう一つはアナルセックスだった。 男性を弄ぶ巧みな手技と、蕾だけでは達しきらない深い快感、 蹂躙されたい本能をタブーを回避しながら満たしてくれる行為に マイマイは没頭していったのだった 腸内をかき回すのに夢中になり手から零れた玩具を取り直す。 そう、アナル用のディルドーだった。 一方の手で足を広げると玩具の先を肛門に押し当てる。 戯画的な亀頭が菊に触れたかと思うと たっぷり解された肛門は当たり前のように玩具を飲み込んだ。 そうして玩具は徐々に太くなる根本の方までグイグイを挿し入れられていく。 「…ン、アァーッッ…」 マイマイは深く長い喘ぎ声を零した。 390 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2012/11/15(木) 00 56 58.54 0 ほぐされていても本来受け入れる所でない腸内に 堅くて柔らかい玩具が進入していく。 指では届かない腸の奥までポップな男性器にかき回されると 深い快感と性行為にも似た出し入れされる卑猥な姿を自覚しては 更に興奮度は増しマイマイの思考は蕩けていく。 足をM字に大きく開き性器を露わにしたポーズで 戯画的な男性器に蹂躙されているイメージを抱くと 本来はタブーとして忌避してきた、 普通に恋愛して、愛する恋人に抱かれるシーンを想像する。 ぼんやりとした輪郭の想像上の恋人が一瞬●●君の顔になった気がするが それも押し寄せる快感の波に流されていった。 日々のダンスのトレーニングで鍛えられた マイマイの身体は引き締まっており 中を抉る快感に大臀筋や括約筋が反応して締め付けると 挿入した玩具の形、堅さをより際立たせて 一層自らを快感で苛んで行く。 ギュウギュウと締め付ける第二の性器を玩具が激しく犯していく。 一層大きな波が押し寄せるのを感じると 更なる快感を求めて玩具を自らの肛門により深く押し込むと 貪るように腰を動かした。 「アア゛ッーッ! アッ! イクッ!」 本来性感帯もないとさえる肛門でマイマイは絶頂に達し、 締め付けが緩んだ肛門から押し込まれてた玩具が 圧力に負けズルリと吐き出された。 392 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2012/11/15(木) 01 09 01.59 0 「フゥ…ハァ…フゥ…」 風呂場の床にグッタリ倒れこみ余韻に浸るように息を整える。 身体はスッカリ冷え、激しい自慰をした下腹部だけがまだ熱を持ってるが これだけしっかりイケば、いつにも増してモヤモヤしてた気持ちもいずれ冷めるだろう。 振り切ろうとした激しい自慰で、 今日の件は想像以上に自分を苛んでいた事に逆に気付かされる。 言い知れぬ気持ちが再び芽を出さないよう熱い湯に使って忘れてしまおう 絶頂による倦怠感に浸りそんな事を考えていた。 玩具の片付けの面倒さと空しさは考えない事にした。 どこかで恋と性の充足を求める若い身体を アイドルに生きると言う鋼鉄の意志で押さえ込むマイマイは 正に鋼鉄の処女だった。 いずれ歪みが大きくなり破綻するとしても──
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N-side 今年の夏は暑かったっけ。それともそんなには暑くなかったっけ。 流れてゆく景色を見ながら、そんなことを考えていた。 上海の街並みは不思議だ。雑なようで整然としてる。 華やかなようでどこかさみしくなる。 ツアーが終わったと思ったら、いつの間にかフェス三昧の夏も終わってしまった。 ひとつひとつのことをゆっくり味わったり消化したりする時間も余裕もないまま、 私たちは用意された武道館への道を歩き続けていた。 上海Perfume号の最後部からの視界に入る二つの頭。 さらさらの黒い髪と、ふわっとした黒い髪が揺れた。 「のっち!のっちってば!」 …あれから、あ〜ちゃんの私に対する態度は、日に日に甘さを増していった。 だいたいどんなときも隣にいて、私の名前をよく呼ぶようになった。 耳元でまだねだることを止めないとき。眠る直前に祈るような調子で呼ばれるとき。 その声は私の胸をすぐにいっぱいにしたけど、同時にどこか心がざわつくのも否めなかった。 両端に小さくてかわいい耳を携えた、その小さな頭で。 たくさんのこと考えて処理しきれなくなった感情を、 私にぶつけることで昇華しようとしているのかもしれないのに。 本当のことを言えない気がして、聞き出すことがただこわかった。 「んー?」 「ほらやっぱゆかの言うとおり、のっち聞いとらんかったじゃろ」 「ほんまじゃ」 どちらも潔くて強くて、もう大人の女の人みたいだ。 二人は私の考えてることくらい簡単にわかるんだろうけどさ。 私は、もう心の奥の方まではわからないよ。それでも今までみたいにやってけるのかな。 憎まれ口を叩きながら振り返った二つの顔は、 ちょっと困ってしまうぐらい、どちらも愛情に満ちたやさしい目をしていた。 すこし安心する。今年の冬は寒くなるのかな。 流れてゆく景色を見ながら、またそんなことを考えた。 A-side 「ふー」 なんだか一仕事終えたみたいに、のっちが満足そうに息を吐いた。 ベッドの上に寝転がって、見慣れない天井を仰いでる。 初日の撮影が終わって周りの大人たちも私たちも疲れ果てているというのに、 当然のように私はのっちを求めた。 自分でもどうかしてると思う。あれから、のっちから離れられなくなった。 どんなときでも一緒にいないと気がすまない。 なんで離れるん。なんでずっとくっついててくれないの。 もう、好きじゃなくなったん。 さっきまでぴったりくっついていた体が離れただけで、こんなにさみしくなる。 ほんと、どうかしてる。 息を吐いたのっちは眉を八の字にさせていた。きっと手も疲れてるんだろうな。 いつも気にしなくていいって言ってくれるけど、 なんだか不安げな表情に、ずっと申し訳なさを感じていた。 私の体が変になっちゃったのかな。 「つかれちゃった?」 「ううん、そういうわけじゃないけど」 のっちの右腕をさすりながら聞くと、肘で自分の頭を支えてこっちを見て笑う。 どきどきするようなさっきまでの目とは違って、途端にやさしい目になった。 「あ〜ちゃんこそ、痛くなってない?」 「ちょっと痛い、かな。」 そっか、って笑ってのっちが私の髪をなでた。 また触れ合う部分ができて、途端に満たされそうになる。 でも笑った顔は、何度も与えられたあの感覚を満たせなくなってしまったことに すこしさみしさを覚えているようにも見えた。 ひとつひとつの言葉とか、ちょっとした息の漏れにまで、 とても敏感になってる自分に気づく。それに一喜一憂してしまうことにも。 私はこの人が好き。誰にも取られたくない。こんなことで嫌われたくない。 「ちょっと痛いけど、我慢する」 素直な気持ちだったけど、口にすると頬が熱くなるのがわかった。 あまりの恥ずかしさに、見られたくなくて胸に顔を埋めて言葉を待った。 「…ちょ、まじで?」 のっちの声がうわずってる。いきなり心臓がドキドキ言い始める。 ちょっとサービスしすぎたかな。でも、そうしてほしいよ。 嫌われたくないもん。もっと触っててほしい。 「…あ〜ちゃんっ!」 私の肩をつかんで、のっちが顔を寄せてくる。 目をかっと見開いて、鼻息が荒い。ちょっと興奮しすぎだよ。 「い、痛くなったら、すぐ言ってね」 こんなときでも噛んでる舌。顔も真っ赤じゃよ。 やさしい。愛されてるって思ってしまう。 「うん」 小さくうなずいて首に腕を回した。 ほんとどうかしてる。愛されてるって思っちゃうんだよ。 N-side 心地のよい倦怠感。耳にはまだ甘い声の余韻が残ってる。 ぴったりと体を寄せてしがみついてくる。 しがみつく強さが前よりも強くなった気がする。 ふわっとした髪が頬をかすめて、まだ汗ばんだ肌の感触を味わう。 ちゃんと伝わってるかな。 全身で交換し合った後でだって、すこし不安になるくらい。大事に思ってる。 「…やっぱり、気にしてる?」 私の鎖骨を指でいじりながら、あ〜ちゃんが言った。 気にかかってるのは事実だった。 でもそれを口にしたら、彼女はきっと気にする。傷つくかもしれない。 別にそのこと自体には意味はない。 でも、イケないのが自分のせいだったら。 それが、彼女が自分に心を許してない表れだったとしたら。 「あ〜ちゃんのせいじゃったら、嫌われても仕方ないけぇ」 指の動きをやめて小さい声で言った。 こんなことまで言わせてしまう自分が情けなかった。 あ〜ちゃん、と力強く声にしてみる。 「こんなことぐらいで、嫌いになるわけないじゃん」 顔を触るとくすぐったそうにした。でも睫毛の先は濡れてる。 「のっちの方こそ…」 下手くそでごめんって言おうとすると、言葉の先を読んだのか微笑みながら言う。 「のっちはなーんも悪くないけぇ」 「あ〜ちゃんこれくらい平気だもん」 「本当に、こんなことぐらい、なんでもないって思ってるもん」 どこまで本気なのかはわからなかった。 そんな自分がうらめしくて、あ〜ちゃんの胸に手をあててなでて頬を押しつけた。 どれだけ中に入ってもどれだけ深く押し込んでも、 決して直に触ることはできないから。 「かわいいね」 「のっち、赤ちゃんみたい」 頭の上で響いた声のやわらかさと、なでられた手のやさしさに甘えてしまって。 濡れた睫毛のことはすっかり忘れていた。 余計な心配、しなくていいよ。 そう言って強く抱きしめ返してあげることすら、思いつきもしなかった。 ただ胸に耳をくっつけて、君の心の音を聞いていたかった。 A-side 「じゃー、おやすみ」 眠そうに笑う顔を背にして、のっちの部屋のドアを閉めた。 さすがにこの状況で抱き合って眠るのは危険だというのは、私から言い出した。 本当は一緒にいたかったし、隣部屋の誰かのことも気になってしょうがなかったけど。 のっちが疲れてるのは目に見えてわかるし、 私は私であのまま一緒にいたらこらえきれる自信もなかった。 部屋に帰る。整ったベッドに腰掛けて新曲を聴いた。 四拍目から始まるのっちの声は強くて真っ直ぐだ。静かに目を閉じた。 日本に戻ればまたリハの日々が始まる。 そこでひとつの成果をあげることができなければまた逆戻りだ。 そんなことありえない。許されるわけがない。 タイトルはDreamFighterという。 最高を求めた終わりのない旅をして、打ちのめされそうになっても前を見て歩くらしい。そんなの、今の私に歌えるわけない。 作ったような自分の声が嫌になって、すぐにイヤホンを外した。 洗面台でコンタクトをはずそうとして、映る自分の顔を見た。 カタ。コンタクトのケースが落ちる。 何度も触れられて何度も声を出したはずなのに、 目の前のそれは信じられないくらいひどい顔をしていた。 ほどなくして溢れた涙はしだいに嗚咽に変わった。 泣くたびに息を多く吐くのに、吸う息は少しで、すぐに呼吸は苦しくなった。 いつも明るく元気で可愛くなんて、そんなの私じゃない。 本当の私は、好きな人を満足させてあげることもできなくて、 抱かれた後でもこうやって一人でうずくまることしかできない。 最高って何?今以上に行かないとだめなの? 今じゅうぶんしあわせなはずなのに、 どうして終わりのない旅になんか出なくちゃいけないの。 わかってる。ここにはいない。 こんなところで泣いていてものっちには届かない。 呼べばいつだって応えてくれるあの手を呼ぶこともできないんだよ。 私はとても何かを伝えたいと思っている。 それを思うとこんなに涙が出る。 涙はなかなか止まってはくれなかった。 気づいたら私は、乾いたユニットバスにへたりこんで声をあげて泣いていた。 −K-side 手に取った写真はどれも素朴で、今の自分たちがそのままフレームに収まっていた。 子供の武器も使えるけど、その時点でもう子供ではない。 大人になったような気でいるくせに、抱えた荷物の降ろし方を知らない。 『のっちー』 笑うたびにワンピースの裾が翻った。 西糖で見たあ〜ちゃんのはしゃぎっぷりは半端なかった。 ファインダーを覗きながらキスするぐらいまでのっちに近づいて、 その愛情を確かめようとする態度には痛々しさすら感じられた。 小さな舟に乗ったときの遠くを見る目に、 ほんのすこしの瞬間にさえも涙がこぼれ落ちてしまいそうな不安定さに、 のっちは気づいただろうか。 まさか同じ人を好きになるなんて思ってなかったよ。 狭い路地裏で互いの距離を縮めて出会っていく二人は、 互いを連れ去り合ってどこへ行ってしまったんだろう。 …あ〜ちゃんと手をつないでいるショットがふと目に留まった。 互いに視線を別の方向に向けている。少し下なんか向いて。 最初少し触れ合ったとき、思わずためらってしまったことを思い出した。 あ〜ちゃんの手の先には、見えないのっちの手がつながれている。 互いをできるだけ絡めとろうとして、強く強く組み合わされている。 だからせめてそれを感じようと、私は握る手に力をこめたんだ。 明日からまた武道館のリハが始まる。 ひとつの終わりが近づいてきてる。何の根拠もないけど、そう思った。 (つづく)
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更新日時 2012-09-12 22 47 15 (Wed) 問題1 一次妄想と二次妄想の違いは? +... 解答 「一次妄想」と「二次妄想」 古典的には、まったく根拠を持たない妄想を一次妄想(「あの人はまだ自分がxxであることに気づいてない。」 「おれはナポレオンの生まれ変わりだ」「近所の人たちが私を電波で攻撃している」など)、何かしらの経験と 関わりがある妄想を二次妄想(「私の病気は不治の病なのだ」「皆の不幸は私のせいなのだ」など)と区別している。 しかし、一次妄想と考えられる妄想にも本人なりの理由が存在している場合も多く、真の無意味で根拠のない妄想はまれである。 了解可能か否かで一次妄想と二次妄想を区別するという定義もあるが、 「私の病気は不治の病なのだ」という妄想も抑うつ気分から悲観的妄想が出現していれば理解可能であるが 健康なひとがそのような妄想をもっていれば了解不能であるため、これらの区別は難しい。 偏見との区別も難しく、考えの根拠を聴取し、ひとつひとつ反証していくことで妄想と明らかになるが、 文化が異なる反証であるとその方法は有効ではなくなる。 さらに一次妄想は以下の5つに細分化されている。 1.妄想気分:周囲がなんとなく意味ありげで不気味と感じる。形容ができないがそこから具体的な判断がおこり妄想となる。 2.妄想知覚:正常な知覚に特別な意味づけがなされる。それが強固な確信となり訂正が不可能である。 3.妄想表像:とんでもないイメージを抱く。 4.妄想覚性:途方もないことを察知するが実体には何も理解できていない。 5.妄想着想:ある考えや古い記憶が突然思いがけない意味をもって思い出され、強固な確信に至ること。 妄想知覚などは統合失調症でよくみられる現象である。 具体例は漫画ブラックジャックによろしくなどで詳しく描かれている。 二次妄想はうつ病でよく見られる現象である。心気妄想、微小妄想などが有名である。 「なんとなく胃が痛い、病院にいって検査しても異常がない、心療内科の受診を勧められ、 それでうつ病と診断される」こういったエピソードが心気妄想には多い。 問題2 身体依存が最も形成されやすいのはどれか?1つ選べ。 ①アルコール ②コーヒー ③解熱薬 ④覚醒剤 ⑤有機溶剤 +... 解答 1(正答率:78%) 解説 ①アルコール:身体依存があるとなっている。 身体依存は①アルコールと書いてあった。 ④覚醒剤は、代表的なアンフェタミン、メタンフェタミンなどに依存性があり、 強い精神依存と精神症状などが知られている。 覚せい剤もトピックス。 意外と正答率が低い気がする。 問題3 58歳の弾性。言動を心配した妻に伴われて来院した。50歳時に手指振戦が出現しParkinson病と診断され、L-dopa治療開始。 56歳時には身体の硬さが気になり、L-dopa増量を医師に懇願し、どんどん増量された。 1年前から妄想と幻聴が始まった。 会社を退職し、気分が高揚して、昼夜逆転の生活となる。インターネットに没頭して高額の物を購入。 性的欲求が亢進し妻に迫り、拒まれると怒り出す。 対応として適切なのは、どれか。 ①抗不安薬 ②抗てんかん薬 ③抗コリン薬の大量投与。 ④非定型抗精神病薬 ⑤L-dopa投与を直ちに全量中止。 出典:104回D59 +... 解答 ④(正答率:89.8%) 解説 Parkinson病のドパミン補充療法中に生じた精神病性障害の治療法を問うている。 診断:物質誘発性精神病性障害 過度のドパミン補充療法の可能性 ×①~③抗精神病作用はない。 ○④非定型抗精神病薬はドパミン遮断作用が弱いのでParkinson様症状をあまり悪化させることがなく、 抗精神病作用を発揮する。そのためL-dopaの副作用を漸減することができる。 ×⑤L-dopaの突然の中断により悪性症候群を生じることがあるため、漸減してゆかなければならない。 出題者コメント 105回は、悪性症候群の問題も要注意だし、 今年は猛暑で、アルコール依存症で入院したケースが多かったと新聞に出ていたので、 アルコール依存症が出るかも。 過去問にアルコール依存症の人を保健所の精神保健相談?(アルコール相談?)に紹介するとか でていたような気がする。 普通は、精神科専門病院に紹介するのが良いと思うけどね。 問題4 二次(または続発)妄想を呈しやすいのはどれか。3つ選べ 1.拘禁精神病 2.症状精神病 3.統合失調症 4.感応精神病 5.祈祷精神病 出典:スレ15 122氏 +... 解答 1,4,5 解説 1.拘禁という特殊な状態から二次妄想を呈する 2.意識混濁の回復期(通過症候群)に見られることがある。一次妄想 3.一次妄想が特徴であるが、一次妄想より派生して二次妄想の見られることも多い。 つまり、妄想が次々に妄想を出現させ(妄想構築)、体系化することがある(妄想の城) 4.精神病を呈したものと密に接することで、発端者の精神症状の一部を共有した状態。 発端者と分離することで症状が改善することが多い。二人組精神病とも言う。 5.祈祷者に対して強い感動が起こり、精神病症状を呈するもの。二次妄想が見られる。 問題5 うつ病でみられるのはどれか。 a 思考制止 b 思考途絶 c 思考化声 d 妄想知覚 e アンビバレンス 出典:101F-8 +... 解答 a 解説 a 思考制止 →デプレ b 思考途絶 →シゾ c 思考化声 →シゾ d 妄想知覚 →シゾ e アンビバレンス →シゾ 問題6 32歳の女性。 1年前に夫婦げんかの最中に動悸がひどくなり、 息が苦しくなり、 気が遠くなり、 体が弓なりの緊張状態となって近医で処置を受けた。 その後、同 様の発作の頻度と持続時間とが増加した。 最近では夫婦仲も冷えて離婚話も出て きたが、その話が出るたびに発作を繰り返し、外来受診となった。 身体的異常 はない。 最も考えられるのはどれか。 a うつ b てんかん c 統合失調症 d 解離性障害 e パニック障害 +... 解答 正解:d 精神の卒試終わってるからゆゆう dだ いわゆるヒステリー 問題7 うつ病について特徴的なものを2つ選べ a 思考途絶 b 精神科における入院患者数が1番である c 回復期の自殺 d 1次妄想 e 貧困妄想 出典: +... 解答 正解:ce 解説 ×a 思考途絶→トウシツ ×b 精神科における入院患者数が1番である→トウシツ ○c 回復期の自殺 ×d 1次妄想→二次 ○e 貧困妄想 うつ病の回復期の自殺に注意 問題8 疾患と治療で誤っているものを全て選べ(2つ) a 小児自閉症-メチルフェニデート b Tourette症候群-ハロペリドール c 睡眠スケジュール障害- メラトニン d レム睡眠障害-プラミペキソール e むずむず足症候群-クロナゼパム 出典106スレ11 431氏 +... 解答 正解:ad 解説 cはメラトニン受容体作動薬のことか? 問題9 神経性食思不振症で正しいものはどれか。3つえらべ。 a GHは高値 b LDLは低値 c T3は低値 d 都市部に多い e 恥毛が抜ける 出典106スレ20 ??氏 +... 解答 正解:acd 解説 ○a GHは高値 ⇒低栄養によってIGF-Ⅰ↓、フィードバックでGH↑ ×b LDLは高値→コレステロール↑ ⇒諸説あるが、飢餓状態でエネルギー需要が高まり、糖不足なので肝でのコレステロール産生↑ ネットで、食べない→胆汁出さない→血中コレステロール産生↑で説明されている人も… どういう理屈かわからんが、事実としてコレステロール↑となっているのは有名らしい ○c T3は低値 ⇒T4→でT3↓rT3↑(lowT3症候群) ○d 都市部に多い ⇒そのとおり ×e 恥毛は抜けない ⇒恥毛、腋毛は正常で、産毛が増加する。(下垂体機能低下との鑑別) 問題10 統合失調症の陰性症状改善に用いるのはどれか a イミプラミン b フルボキサミン c ハロペリドール d リスペリドン e パロキセチン +... 解答 正解:d 解説 ×aイミプラミン(トフラニール)は三環系抗うつ薬 ×bフルボキサミン(デプロメール、ルボックス)は、うつ病・うつ状態,強迫性障害に効果のある選択的セロトニン再取り込み阻害薬。 ×cハロペリドール(セレネース)は統合失調症の陽性症状に効果のある抗精神病薬 ○dリスペリドン(リスパダール)は統合失調症の陽性症状と陰性症状に効果のある抗精神病薬。双極性障害(躁鬱病)にも効果がある。 ×eパロキセチン(パキシル)はうつ病,うつ状態,パニック障害,強迫性障害に効果のある選択的セロトニン再取込み阻害剤 問題11 解離性〈転換性〉障害の症状として誤っているのはどれか。[99E7] a 健忘 b 失神 c 離人症 d けいれん e 多重人格 +... 解答 正解:b 解説 ○a健忘は、解離性健忘とも言う。 ×b精神症状として意識障害を示すこともあるが、完全に失神してしまうことはないということで。 ○c離人性障害とも言う。 ○d感覚障害、視力障害、疼痛、けいれんなどの神経系の症状をみることが多い。 ○e解離性同一性障害(多重人格障害)とも言う。 解離性障害とは、いわゆるヒステリーのこと。 ヒステリーは,精神的葛藤が身体症状として現れる転換性障害と,精神症状として現れる解離性障害を含む概念である. 身体症状としては,歩行障害,感覚障害,視力障害,聴力障害,疼痛,けいれんなどの神経系の症状をみることが多く, 精神症状としては興奮,健忘,遁走,意識障害,多重人格などがある. ヒステリーはかまってもらいたいちゃんだから、失神なんかしておれんw。 問題12 [105D55] 14歳の女子。学校の健康診断で高コレステロール血症を指摘されたため精査目的で来院した。 1年半前から友人と一緒に食事量を減らしてダイエットを開始した。半年前からは筋力トレーニングも開始した。 最近は倦怠感を強く自覚している。減量開始前の体重は43kgであった。意識は清明だが,表情は乏しい。 身長151cm(-0.9SD),体重27kg(-2.8SD)。体温35.6℃。脈拍44/分,整。血圧110/92mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。 腹部は平坦,軟。皮膚は乾燥が目立ち,四肢に冷感を認める。 血液生化学所見:総コレステロール268mg/dl,トリグリセリド 82mg/dl,TSH 4.6μU/ml(基準0.2~4.0),FT3 1.8pg/ml(基準2.5~4.5),FT4 0.8ng/ml(基準0.8~2.2)。 頭部MRIで軽度の脳萎縮を認める。この疾患に認められる症候はどれか。3つ選べ。 a 無月経 b 粘液水腫 c むちゃ食い d 自己誘発性嘔吐 e アキレス腱肥厚 +... 解答 正解:acd 解説 粘液水腫って明らかに違うの? 甲状腺機能低下症かと思ったんだけど? 甲状腺機能低下症だと体重増加するような 思春期 ダイエット、筋トレ開始と、精神活動は活発(甲状腺機能低下だと精神活動緩慢) 体重の著明な減少(甲状腺機能低下だと体重はむしろ増加) lowT3症候群 T4正常範囲内(甲状腺機能低下では両方下がる) 問題文に食事量を減らしてって書いてあるのに 解答にむちゃ食いがあるんだな 身体像に歪みがあってかつ病識が無いから 食事量減らす→おなかすいて夜中とかに無茶食い→自己誘発嘔吐 を繰り返す 食事量を減らしてってのが自己申告だから 実はウソっぱちってことなんだな 色々と罠が張られた良問だぜい 一応、ANに関してこんなのがありましたです。 「・・・神経画像診断(CT、MRIなど)で種々の程度の脳実質の縮小像が見られることが多いが、 これら多くは可逆性で、体重の回復とともに旧に復する。脳波にも徐派などの異常が出現することがある」 (引用 現代臨床精神医学p.295~) 問題13 [105I38] 45歳の女性.自転車で走行中に車と衝突し,直後から意識障害をきたしたため搬入された. 入院時および翌日の頭部単純CTに異常を認めなかった.入院後3日で意識が回復し,上下肢には麻痺を認めず,歩行も正常であった. 日常会話に支障はないが,食事後5分経つと食事をしたことを忘れている.自分では物覚えは正常だと思っている. 行きたいところがあると,一人でどんどんその方向に歩いて行ってしまう.この患者が入院後3週で自宅に退院することとなった. 家族への説明で適切でないのはどれか. a 口論しやすい. b 浪費しやすい. c 転倒しやすい. d 戸締りを忘れやすい. e 火を消し忘れやすい. +... 解答 正解:c 解説 短期記憶障害?海馬がやられたのかな 運動機能と精神活動で分けて考えて。 こういう問題を出す意義はあるんだろうか。 なんとなくcは選べるが、精神機能と運動機能を 分けて考えろというのが一番しっくりくるな。 交通事故にあう前から、認知症の症状があったかどうかが問題文の中には 書いてない。 キーポイントは、国試問題なら書いて出題すべきだな。 解説書を見たら、診断は高次脳機能障害だったw 頭部外傷で認知機能障害や人格変化などの高次脳機能障害をきたすことも少なくないと。 問題14 105-I 70歳の男性.物忘れを心配した娘に伴われて来院した.3年前に妻と死別し,現在は娘夫婦と同居している. 1年前から物忘れが目立つようになり,徐々に進行した.半年前から「妻が赤い服を着て現れる」と言うようになった. 表情は乏しく,暗算をさせると右手がふるえて,手関節に筋強剛がみられる. Mini-Mental State Examination〈MMSE〉では15点(30点満点)である.この患者の診断に最も有用なのはどれか. a 脳波検査 b 脳SPECT c 頭部MRA d 脳脊髄液検査 e 頭部造影MRI +... 解答 正解:b 解説 レビー小体型認知症の典型例 認知症症状、幻視、パーキンソン症状が有名だろ。 脳SPECTで後頭葉の血流低下が特徴のはず。 幻視に対して、抗精神病薬は過敏性があるので禁忌とか。 通常より少量のアリセプト+漢方の抑肝散が推奨されている。 調べたらレビー小体型認知症では、 123I-MIBG心筋シンチグラフィ検査で心筋への取込が低下しているとか。 123I-MIBG心筋シンチグラフィ 中枢神経核医学から外れる循環器の検査であるが,神経疾患の診断に頻用される検査であるので補足しておく. Parkinson病とLewy小体を伴う認知症で高率に心筋への取り込みが低下することが知られており, Parkinson症候群を呈する疾患の鑑別に頻用される. 件数的には循環器疾患よりむしろ神経疾患の検査の感がある. 問題15 (101F57) てんかんの発作型と抗けいれん薬の組合せで誤っているのはどれか.(正答率55.5%) a 欠神発作 - フェノバルビタール b 脱力発作 - バルプロ酸ナトリウム c 強直間代発作 - フェニトイン d ミオクロニー発作 - クロナゼパム e West症候群〈点頭てんかん〉 - ACTH +... 解答 正解:a 解説 ×a欠神発作(小発作)には、エトスクシミド(ザロンチン)やバルプロ酸(VPA:デパケン)が用いられる。 フェノバルビタール(PB)は不眠症や不安緊張状態の鎮静,てんかんの痙攣発作,強直間代発作,焦点発作,自律神経発作,部分複雑発作、精神運動発作に用いる。 PBは欠神発作とミオクロニーには無効または悪化。 ○b脱力発作(姿勢保持筋の急激な緊張低下)は、第1選択薬としてバルプロ酸(VPA:デパケン)が用いられる。 ○c強直間代発作には、 フェニトイン、フェノバルビタール、バルプロ酸などが用いられる。 この中でもバルプロ酸が第一選択薬になることが多い。 ○dミオクロニー発作(眼瞼,顔面,上下肢に3Hzの軽度の間代けいれん)は疾患,病変部位の如何にかかわらず,クロナゼパム(CZP:リボトリール、ランドセン)が第1選択とされる. これが奏効しない場合,バルプロ酸(VPA),カルバマゼピン(CBZ),ベンゾジアゼピンなどの抗てんかん薬や抗コリン薬を使用するが, 近年,難治性皮質ミオクローヌス患者に対し,GABA誘導体のピラセタムが使用可能となっている. ○e West症候群〈点頭てんかん〉は、抗てんかん薬では抑制困難。副腎皮質ホルモン(ACTH)が有効で,約40%の患者の発作を抑制しうる。 しかし合併症を併発しやすく,その場合には死亡率が高くなる。 "全部馬鹿"で全般発作→バルプロ酸、部分発作→カルバマゼピンで憶えてる。 ミオクロニーにクロナゼパムとウェストにACTHはいいとして、フェニトインも何でも使ってよさそう。 脱力発作も欠伸発作も意識失うから全般性だからバルプロはよさそう。 消去法でa。ムズイ。だれか抗てんかん薬の憶え方教えて。 出題者ではないが、おおわくは707さんの言うように "全部馬鹿"で覚える。 A.局在関連性(部分発作)てんかん 発作の局所起源が明らかなもので,大脳半球の一部に病変が存在する. 発作は一側の上肢などから始まる. カルバマゼピン(CBZ:テグレトール)またはフェニトイン(PHT:アレビアチン)が第1選択薬. B.全般性てんかん (全般性)強直間代発作,欠神,ミオクロニーの3種類の発作型が単独,あるいはさまざまな組み合わせからなる. バルプロ酸(VPA)はこれらすべての全般発作に有効である. フェノバルビタール(PB)は不眠症や不安緊張状態の鎮静,てんかんの痙攣発作,強直間代発作,焦点発作,自律神経発作,部分複雑発作、精神運動発作に用いる。 PBは欠神発作とミオクロニーには無効または悪化。 あとは、これと解答の解説に書いたことを覚えるってことかな? 補足 小発作には、以前はトリメタジオン(TMO:ミノアレビアチン)が用いられていたが、 催奇形性も抗てんかん薬の中では最も強いことなどで, より副作用の少ないエトスクシミド(ザロンチン)やバルプロ酸が使用され, TMOは現在ではかえりみられなくなった。 問題16 (99D84) 緊張病症候群について誤っているのはどれか. a 統合失調症で現れる b 脳器質疾患で現れる c 感情鈍麻が現れる d 反響動作が現れる e 拒絶症が現れる +... 解答 正解:c 解説 脳器質疾患で緊張病症候群が出現するのは有名。 一般的には緊張病症候群では、初発~比較的新しい統合失調症で見られる場合に多いから、 緊張病症候群では感情鈍麻は積極的には評価しないらしい。 問題17 101D-12必修問題 (正答率:99.7%) 45歳の男性。出勤中に起きた激しいめまいと吐き気とを主訴に来院した。 1年前に転勤となり,通勤に1時間半かかるようになった。 慣れない仕事でしかも上司との関係が悪く,出勤を負担に感じるようになった。 半年前からは,なかなか寝つけず,朝も早く目が覚めてしまうようになり, 倦怠感が強く出勤がつらくなってきた。 職場では,午前中は特に,頭が重く感じられ仕事の能率が上からないために, 夜遅くまで職場に残って仕事をしなければならなくなっていた。 1か月前からは,食欲がなくなり,何をしても楽しいと感じられなくなった。 この患者で最も注意すべき症状はどれか。 a幻 聴 b過呼吸 c被害妄想 d自殺念慮 e記銘力低下 +... 解答 正解:d 解説 診断:うつ病(気分障害) ×a幻聴は統合失調症などの精神病症状で代表的症候。 ×b過呼吸は不安発作の症状である。うつ病でも起こることがあるが、重大ではない。 ×c被害妄想は統合失調症などで認められる。 うつ病では貧困妄想、微小妄想が認められることがある。 ○dうつ病では一見軽症に見えても、自殺念慮には最も注意をはらわなくてはならない。 一般には、うつ病が良くなりつつあるときに自殺企図に特に注意が必要。 ×eうつ病でも記銘力低下は一時的には起こりうるが、指標とすべき重要な症候ではないとされる。 問題18 106A18 疾患と治療薬の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。(正答率:75.8%) a West症候群………………………………ACTH b 憤怒痙攣…………………………………バルプロ酸ナトリウム c 複雑部分発作……………………………ビタミンB6 d 単純型熱性けいれん……………………フェニトイン e Lennox-Gastaut症候群…………………クロナゼパム +... 解答 正解:ae 解説 ○a West症候群は点頭てんかんともいわれ、生後4~7ヶ月に発症のピークがあり、 発作間欠期の脳波でヒプサリスミアhyspsarrhythmiaと称する1~7ヘルツの高振幅徐波を背景に、 棘波(spike)、鋭波(sharp wave)が多相性に出現する。 薬は、ビタミンB6、ACTH(筋注または静注)、クロナゼパム。 ×b憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)は乳幼児が激しく泣くと同時に息を止める発作で、てんかんではない。 自然に軽快する。 ×c複雑部分発作は部分発作+意識障害のてんかん発作である。 持続時間は2分前後で、96%に自動症を認める。 治療薬はカルバマゼピン、ゾニサミド、フェニトイン。 ×d単純型熱性けいれんは、38℃以上の発熱に伴って発症するけいれんである。 生後6ヶ月から3歳までが多い。 小児痙攣性疾患の中で最多を占め、全小児の7~8%の頻度で発症する。 予後は良好で特別な治療は不要である。 ○Lennox-Gastaut症候群は、全般性遅棘徐波複合が認められる。 精神発達遅滞を伴う難治性のてんかん性脳症である。 クロナゼパム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギンに加え、ケトン食療法が用いられる。 覚え方 West症候群の薬は、ウェストバックで。(BAC:ビタミンB6、ACTH、クロナゼパム) West症候群が悪化するとLennoxになるのでLennox症候群ではクロナゼパムもいけると思いました と。 一般的には全部バカで覚える。 全般性発作は、バルプロ酸ナトリウム 部分発作は、カルバマゼピン 問題 出典: +... 解答 解説
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水晶の間欠泉 ◆EGv2prCtI. エヴィアンはただ、救いを求めていた。 家族を殺されて、それでも自分は生き残ってしまった。 その重みに耐えられなくなりそうな時もあった。 自分の部屋で震えて、何度も何度も家族のことを思い出していた。 優しかった母親。 少し痩せていた体格だったが、頼もしかった父親。 普通の子供なら持ち合わせている筈の家族を、エヴィアンはいっぺんに失ってしまった。 そんな時に自分を助けてくれたのが、あの弁護士だった。 篠原涼花。 それが彼女の名前だった。 綺麗で、すごくかっこよくて、頭もよかった。 そして献身的に、自分を支えてくれた。 警察やマスコミからの執拗な質問攻めで精神が追い詰められた時も、受け止めてくれた。 あの人が居なければ、今のエヴィアンは居なかっただろう。 それでもエヴィアンには、内面に大きい傷が残ってしまった。 男性が、どうしようもなく嫌いになった。 そして、同時に恨めしくなった。 きっと、男は誰も彼もがあの強盗犯と同じだと思い込むようになってしまったのだ。 クラスメートにしたってそうだ。 太田太郎丸忠信を始め、森屋英太、グレッグ大澤や楠森昭哉、そして、ラト。 特にラトにはより大きい嫌悪を感じていた。 以前からやたら自分に話しかけきて嫌だったのだが、しかしそれよりも、もっと決定的な事件があったのだ。 そうだ。少し前、夕暮れの校舎裏、タクシーを呼んで駐車場へ出る為にたまたま通りかけたそこの学校の影でラトが仰向けになって、その上でテトが―― ――思い出すだけでもおぞましい。 テトをたぶらかしたに違いないのだ。 あの、汚らわしいオスが。 そして、今に至る。 男に依存した女子生徒にもいい加減怒りがこみ上げつつあったが、でも、ようやくエヴィアンにも安心出来る時が来たようだ。 「あの……吉良さん?」 エヴィアンはためらうことなく声をかけた。 目の前の少女、吉良邑子(女子九番)に。 一人でその場に座っている。 声に気が付いた邑子が振り向くと、そのやや右側の額から血が流れているのが分かった。 エヴィアンは予想もしていなかったのでぎょっとした。 どうやら、誰かに襲われた、らしかった。 「吉良さん! 大丈夫!?」 エヴィアンはすぐさまハンカチを取り出そうとする。 その時、邑子が呻くように言った。 「どうしてです?」 「え?」 エヴィアンは少し驚いた。 まさか、そんなことを聞かれるとは思いも寄らなかったからだ。 自分は邑子を助けたい。 ただ、それだけだったのに。 エヴィアン自身も内木聡右から逃げていて、余裕はとても無かったのだけれど、しかし目の前に傷ついている人(男性除く)が居るのに放っておける訳が無い。 だが邑子の思考はエヴィアンが思う場所よりも全く別のところにあった。 「どうして、私を置いていくのですかあああああ!??」 瞬間、ぱあんと乾いた音が耳を劈くと、エヴィアンの右腕に熱が起こった。 何が起きたか理解が出来なかった。 エヴィアンが熱を感じたその腕の部分に手を当てると、妙にぬめりを帯びた感触が伝わった。 それが分かった時、唐突にエヴィアンの脳に激痛が届き、全身に伝わる。 「ああっ!」 エヴィアンは右腕を押さえてその場に倒れ込んでしまった。 邑子のデリンジャーから至近距離で放たれた弾丸はエヴィアンの右腕を貫通し、そしてまた、美しい蝶の羽の片方すら貫いていた。 どくどくと脈を打って傷から熱さと痛みが広がり、次第に血が地面の葉にもこぼれ落ちる。 「英人様、お願いします、もう一度私に機会を!」 邑子は懇願するような口調でそう口にして、再び銃を撃った。 今度はエヴィアンの右耳の近くに当たり、再び羽に新たな穴が空いた。 そのまま、邑子は銃に新しく弾を詰め替え始めた。 このままならば今度こそ次に超スピードで飛んできた鉛がエヴィアンの額を抉り、そのまま脳髄を後頭部から吹き飛ばすだろう。 しかしそれより何より、エヴィアンは邑子に対する恐怖よりも強い怒りがこみ上げつつあった。 英人――玉堤英人(男子十九番)のことだ。 その英人の為に、邑子はエヴィアンを殺そうとしている。 ――最高に腹が立った。 今までに経験したことのない激昂。 エヴィアンの他の感情全てがそれにぶっ飛ばされてしまった。 今世紀最大のヒットだ。 ――確か、エルフィもそうだった。 どうして内木聡右と一緒に居た? そんなに――そんなに男などと居なければ生きていけないのか? そしてこの邑子もまた、わざわざ英人の名前を上げてまで英人に奉仕しようとする―― エヴィアンは腰に隠していた催涙スプレーを取り出し、急いで上半身を起こすと弾の装填をまさに完了しようとしていた邑子目掛けて吹き付けた。 「ああああああああああ!?」 邑子は突き刺すような目の痛みに叫び、銃を持ちながらだったが顔を両手で抑えた。 そしてエヴィアンは怪我をした右腕の代わりに左手でカッターナイフを逆手に持ち直し、邑子に斬り掛かった。 ざっ、と皮膚を切り裂く感覚がエヴィアンの手に伝わった。 邑子の左手の甲に赤い線が引かれて、そこから血がぷつりぷつりと溢れ出してきた。 構わず、エヴィアンはカッターナイフの刃を突き刺すように振り上げる。 今度は刃が邑子の手と指の間を通り抜けて、顔に一気に向かった。 「いいいいいいいい」 邑子が絶叫した。 思いがけないぐらいあっさりとカッターナイフが深く入り込んでいる。 カッターナイフが瞼を割って邑子の眼球を破壊しているのだ。 普段のエヴィアンなら嫌悪感と罪悪感で、下手したら吐いていたかも知れない。 しかし今はそんなことどうでもよかった。 人を傷付ける恐怖よりも、怒りの方がずっと勝っていた。 「どうして男なんかと、男なんかと!」 邑子の左目に突き刺さったカッターナイフを引き抜いて、再び振り回し始めた。 次々と邑子に傷が刻まれ、そして顔面を赤く染め上げていく。 「私はあ……英人様の為に……」 邑子は左目から流れくる血と何か水みたいな透明の液体を押さえて、息も絶え絶えのようにつぶやいた。 ――この期に及んで、まだ男のことを! エヴィアンは、カッターナイフを大きく振りかぶって叫んだ。 「もう、男なんかにすがった女のことなんか誰も信じない。あなた達なんて死ねばいい!!」 そのまま小さな刃が邑子の額に落ち―― ―― 唐突に、思い出す。 いつか、弁護士の篠原涼花にこんなことを言ったことがあった。 「あなたは男の人が嫌いじゃないの?」と。 すると、涼花はこう答えたのだ。 「嫌っていては仕事にならないけど、前に一時期怖い時があったわ。 でも、分かったの。怖がって逃げていては駄目だって。 立ち向かって、その怖い感情を克服しなきゃ前に進めないって」 その時はその言葉は理解は出来なかった。 立ち向かうって何? とか思っていた――のだけれど。 ――こんな時になって、思い出した。 ようやく、その言葉の意味を分かった気がする。 すると自分の今、邑子に対して行っている行為は愚かだとも理解した。 少なくとも、エヴィアンは邑子に撃たれた時には恐怖を感じていた。 その後、邑子に立ち向かおうとせず、怒りに身を任せて傷付けてしまった。 殺してしまうより、話し合って分からせた方が、ずっと良かったのだ。 なのに自分は、邑子を殺そうとしてしまった。 話せば分かるかも知れなかった相手を。 ――単純に、玉堤英人に脅されていただけかも知れない邑子を。 ――ああ。 今、このことを思い出した理由が分かった。 あの人は、自分に殺人なんて禁忌を犯してほしくないに決まっているのだ。 きっと、エヴィアンはそのことを頭の隅だろうとなんだろうと、いつも留めていた筈だ。 ああ。 「ひどい、エヴィアンさん。こんな人だとは思いませんでした」 その回想が、僅かな時間を作った。 邑子のデリンジャーが二回、火を吹いた。 エヴィアンの顔が弾けてイチゴジャムを塗りたくったようになると、カッターナイフを邑子の腹部の辺りに落として、邑子に覆い被さるように崩れ落ちた。 その時にはもう、事切れていた。 恐らく邑子がデリンジャーを発砲したことにも気付かなかったままだろう。 邑子は顔が潰れた死体を見下ろして、言った。 「カッターなんかじゃ人は殺せませんよ?」 事実、その通りだった。 左目を失いこそはしたが、他は全く致命的な傷ではない。 重要な血管を切断されたわけでもない。 カッターナイフの刃では浅い傷しか付けることが出来なかったのだ。 もちろん、落ち着いてみればすぐさまデリンジャーを撃てる状態にあった。 「ご主人様……何処に行かれたのでしょう?」 先程まで居た、玉堤英人の幻影は消失していた。 痛みによるショックによって覚醒したのだろう。 しかし、邑子はその事実には一切気付かなかった。 それから、邑子は思い立ったように突然叫んだ。 「そうだ、この綺麗な羽をご主人様に持って行きましょう! きっと喜んでくださるわ!」 邑子はカッターナイフを手にした。 そして、エヴィアンの死体から傷が付いていない左羽を切り取る作業にかかった。 片目の潰れた傷だらけの顔で、無邪気な笑みを浮かべながら。 【G-6 山道/一日目・朝方】 【女子九番:吉良邑子】 【1:私(たち) 2:貴方(たち) 3:あの人(たち)、ご主人様、お嬢様、○○(名字くん、さん付け)】 [状態]:左目失明、顔と手に大量の切り傷、頭を殴打、倦怠感 [装備]:カッターナイフ、レミントン・デリンジャー(0/2) [道具]:支給品一式×3、予備用44マグナム弾(22/40)、木刀、エヴィアンの羽 [思考・状況] 基本思考:ご主人様(英人)の命令に従い、間由佳以外を皆殺しにする 0:間由佳がもしゲームに乗っていても出来うる限りは説得する 1:もし彼女を殺してしまった場合はご主人様を殺して自分も死ぬ 2:自分が見つける前に彼女が死んでいた場合も、1と同様の行為を行う 3:聡右を逃がしてしまったことが相当ショック [備考欄] ※他生徒に出会い、交戦に縺れ込んだ際に、彼女は「ご主人様(英人)の命で動いている。」と言いかねません(彼女に悪意はない) ※如月兵馬の「雫切り」の太刀筋をなんとなく覚えています ※放送は聞いてません 【女子三番:エヴィアン 死亡】 【残り25人】 時系列順で読む Back Visit O,s Grave Next Life was like a box of chocolates 投下順で読む Back 高校生デストロイヤー Next Life was like a box of chocolates traffic 吉良邑子 愛にすべてを traffic エヴィアン 死亡
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……ああ、見つかってしまったか。 出来れば佐々木の暴挙を他人に知らしめる事は良しとしなかったから、敢えて見つかりにくいようにしていたのだが、発見してしまうとは目敏いというかしつこいというか…… オホン、だが見つけてしまったものはしょうがない。俺が既定事項を守るため、佐々木がやっちまった失態をお見せしよう。 なお、お子様にはちょっと過激な内容を含んでいるかもしれないから気をつけてくれ。そんなに大したものじゃないが念のためな。 そして、ググって来た人、あるいは更新履歴から辿ってきた人は、物語の最初から読んで頂けば幸いである。 こちらだ。 時は流れて当日。 かったるい英語の授業はチャイムを持って終了を告げ、いよいよ問題の体育の時間前である。 俺はと言うと倦怠感溢れる授業からようやく解放され、腕を伸ばして背伸びをしながらどうやって佐々木をガードしようか、それとも知らん振りしてようか、どっちにしようかなと考えていたその時。 (キョン、それじゃあ始めるよ。よく見ててね) 後ろの席から小声で語りかけてくるのは、やる気を完全に取り戻した一人の少女。 ふと後ろを見ると、既に体操着を取り出して準備万端の状態。あれだけ嫌がっていたのがまるで嘘のような仕草であった。 授業が終わったばっかりなので、教室を移動すべき男子生徒の半数以上はまだ自室に篭っている。勿論俺もその一人。 やるなら今をもって他は無い。 ああ、頼んだぜ。俺はなるべくそっちを見ないようにしてるから、ちゃっちゃとやっちゃってくれ。 (何を言っているんだキョン。キョンにもやってもらうことがあるんだ。ちゃんと手伝ってもらわなきゃ困るよ) は? お前、何を言って―― そう言おうと、立ち上がって振り向いた瞬間、佐々木は俺の両腕を掴んで、 (キョンは壁だからそこから動いちゃだめ) 佐々木はそのまま両手を机の上に持って行き、俺の両手が机に付いたのを見定めてからホールド。 つまり今の俺は、自分の椅子を起点にして佐々木の机に手をかけている状態。身を乗り出して喋るハルヒと逆パターンだと捉えれば分かりやすいだろう。 「……壁?」まだ点在している男子生徒からの目線を防ぐための壁ということか? なるほどそれは妙案だ。 覆い被さるように存在する俺は、佐々木の姿の大半を覆い尽くしている。加えて俺達の席は窓際後方の角(この前の席替えでそううなった。結局ハルヒの定位置に佐々木が来たことになる)。 これならば大多数の人間が佐々木の生着替えを直視することは無いだろうし、見えたとしても腕や足の一部だけ。 『私、ライトになります』と言って服を脱いだ後の戸○恵○香が佐々木、カ○プ○ード○ラ○トが俺。 つまりそんな状態だ。 妙案だとは思うのだが……しかし佐々木、ひとつ教えてくれ。 なぜ……俺達は向き合ったままなのだ? (くっくっくっ……決まってるじゃないか) 妙艶な笑みを浮かべた後、佐々木は迷わず、 (キョンに見せるためじゃないか) 「なっ!!」 (他の男子生徒の目線をカットしつつ、キョンの視線だけはこちらに送る。となればこの方法が一番じゃないか。そう言うわけだからちゃんと壁の役よろしく。ああ、もっと近づいてもいいんだよ。その方が露呈されにくいし、キョンはもっと近くで見られるし) ……やっぱり勘違いしてやがった…… 大多数の男子生徒がまだ教室にいるこの時間、佐々木は障害物を巧みに利用し、男子生徒からの死角になるよう着替え始めた。 障害物も去ることながら、集まりつつある自他クラスの女子生徒が上手い具合に包囲網となる。 おかげで佐々木の裸体(といっても下着姿だが)を間近に見る男子学生は殆どいないはずだし、仮に見えたとしてもかなりの遠目で何をしているか分からない状態だろう。 俺、一人を除き。 (よーく見てて……) 佐々木は思考が停止しかけている俺の目の前で、やおらセーラー服のファスナーに手をかけた。 ファスナーを開いた先から、佐々木の白い肌が姿を見せ始める。 うわちょっと待て。水着やバニーガールで女性の肌は見慣れているし、朝比奈さんの下着姿も正直何度も拝んでいる。 だが、ここまで間近で見た事はなかった。 なんだかやばいってこれは! 心の中では道徳心と自制心が入り混じったそんな叫びを上げているのだが、悲しいかな俺の本能たる部分がそれを拒む。 ファスナーは既に全開。チラリと見える、白くて細い腰から目が離せない。 (くくく……キョン、どこ見てるの?) その姿を見た佐々木は突如、露出した部分を遮るように両手を宛がった。 肌を見せないようにするため……ではなかった。セーラー服を掴んだ両手を、そろそろと捲り上げるためだった。 しかも一気に脱ごうとはせず、線香が燃えるくらいゆっくりの速度で、するするする、と少しずつ肌をさらけ出す。 腰の括れが露になる。佐々木のスタイルのよさは特級品。加えて瑕疵一つ無い艶美な肌が、彼女のフェロモンを助長している。 ゴクリ。 (もう、エッチ) 思わず生唾を飲んだ俺に、佐々木はセーラー服を半分ほど捲し上げた辺りで一旦動きを止めた。 俺の視線があまりにも目ざとかったのか、生唾の音に興ざめしたのか。それとも他の意図があったのか、それはわからない。 しかし、脱ぎかけのこの光景はある意味素っ裸よりも衝撃的だ。 腰は完全に露出し、胸郭の下半分の部分も丸見え。上半身の半分を曝け出している。 中でも見えそうで見えない下着。これは違法だ反則だ。チラリズムここに極まれり、むしろバンザイ。 この体勢を保持したまま平常心を保っていろと言う方が難しい。 さらに佐々木は流し目を送って、 (キョン、この先、見たい?) コクッ、と頷いてしまったのは俺が健全な男である証拠だ。誰にも責められるべきことではない。 それに満足したのか、佐々木は再び服を脱ぎ始める。 するすると脱ぎ始めるセーラー服、そしてついに彼女の下着が露に…… (ああん、ひっかかっちゃった) なんとぉっ! これは困ったトラブルだ! 佐々木のセーラー服の端が、胸の膨らみによって阻まれた! キュウキュウと苦しそうに悲鳴を上げるのは、佐々木自身ではなく、寧ろ胸。 思いっきり力を入れたらセーラー服が破れるんじゃないか? うむ、それはそれで見てみたいな。 しかし俺の思いとは裏腹に、佐々木は強引にセーラー服を引っ張って、引っ掛かっていた膨らみから強引に開放。 ポヨポヨポヨって……うわあ……揺れすぎ…… そして、ついに佐々木の胸の全容が明らかとなる。 引き締まった体に、場違いに実ったバスト。その大きさを端的に言うと、 『デカイ』 『デカすぎる』 『なんつうデカサだ』 もうそんな言葉しか出てこない。 デカイデカイと連呼しているが、お化けカボチャみたいに巨大なものがくっついているとか、世界ビックリ人間に登場しそうな範疇の大きさではないぞ念のため。 人知の範囲内で――言い換えれば、正常な人間が興味を誘うレベルで、十分大きいのだ。 バストとカップの関係は詳しく知らないが、個人的観測でDは確実に超えている。朝比奈さんと遜色ないか、下手したらそれ以上だ。 残念ながら大人の朝比奈さんよりは少々劣る気がするが、あの人のレベルで物事を考えるのは早計である。高校生レベルとしては超一級のバストの持ち主である。 服を着ているとそんなに目立つようでもなかったのだが……もしかして佐々木は着やせするタイプなのだろうか? それに半年前――橘の脂肪を利用して豊胸手術をした時――よりも大きく感じる。 それは恐らく、彼女が見につけている下着のせいであろう。 紺色でラメの入っている時点で学校に着てくるのはどうかと思うのだが、問題はそこではない。 佐々木が身に付けているブラは、はちきれんばかりの果実を苦しそうに支えている。下手に刺激を加えたらそのまま零れ落ちるぜ、あれは。 ギュウギュウの下着が胸の大きさをより際立たせているのだ。 佐々木、水着は蒸れるから嫌だって言ってたのに、サイズ違いのブラの方がバストにとって悪影響を及ぼすんじゃないのか? とは言え、これ以上ない眼福な光景なので黙っておく。 (さ、佐々木! そ、そんなアピールは必要は無いぞ! さっさと脱いで体操着を着てくれれば問題ない!) 少し落ち着きを取り戻した俺は、彼女のみに聞こえるよう精一杯叫んだ。目の保養になる事は間違いないが、場所が場所だけにこんなところで悶々とするわけにはいかない。というか俺がやばい。 しかし佐々木は俺の言葉に対してくっくと喉を鳴らしたのみ。胸の上まで上げたセーラー服を下げる素振りは一向に見られない。 それどころか佐々木は更なる暴挙に出た。なんと二の腕を使って、胸と胸を挟みやがったのだ。 胸と胸の間に出来た漆黒の渓谷は、冗談ではなく本気で吸い込まれそうだ。 (キョン、どうかな? 涼宮さんに引けをとらないと思うんだけど?) 佐々木に言葉に共鳴するかのように、両腕で挟まれたものがふるふるっと揺れた。 (以前長門さんに頼んで大きくしてもらった時よりも立派になってると思わないかい? あれからスタイルをキープするために美容体操は毎日欠かさずやっている。おかげでスリーサイズは黄金比を保持しているんだ) ふわふわっ、とまた揺れた。 佐々木が喋るたびに、声の振動が胸に伝わって、衝撃を吸収しているためだ。 うわぁ……たまらん。 思わず鼻を抑える。鼻血が出るわけじゃないが、鼻の下は完全に伸びきっている。それを隠すためだ。 しかし佐々木の攻撃は止まらない。 (おや、その顔は信じてないようだね? せっかくキョンのためにバストとウエストをさらけ出してあげたのに……そうか、残りのヒップも見てみたいというわけか。しかたないな、特別に見せてあげよう。くくくっ、本当に『エロキョン』で困るわね) 再び喉を鳴らし、上着の胸の上に保持したまま器用に腰に手をあて、スカートのジッパーを下げ始めた。 噂の着○○って奴だ。下手な裸より刺激的だ。 太腿から続く腰下のラインも露になる……って、 「さ、佐々木! そ、そこの紐って、まさかパン……」 「――――――!!」 思わず声が出てしまった俺は、しかしこれ以上言葉を口にすることができなかった。 怒涛の勢いで教室から放り出されたためである。 ――放り出したのは、クラス委員長の朝倉涼子。 「…………」 もの悲しい顔をした朝倉は、俯き加減のまま俺をじっと見つめ、そして静かに扉を閉めたのだった。
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咲の悩み事 京太郎×咲 衣×咲 百合注意 CDbreaker 第3局 430~ 434 506~ 520 咲の悩み事 2日目 咲の悩み事 1日目 “愛”って何だろう? “恋”って何だろう? 私は最近よくそんなことを考える。 別にそれは最近読んでいる本が恋愛小説モノばかりだから、とかそんな理由ではない。 その理由は、私に好きな人がいるからである。 私の幼なじみで、言い方を変えると腐れ縁。 毎日毎日「レディースランチが旨そうだから」と言う理由だけで私をお昼に誘う酷いけれど憎めない男の子。 きっと今日もまた誘ってくるのだろう。 「咲ー!」 「京ちゃんっ」 そう、京ちゃんもとい須賀京太郎だ。 「また寝てたのか、咲は」 「もー、今日は寝てないもん」 「そんなことよりさ、咲。 今日のレディースランチも旨そうなんだよな、付き合ってくんねーか?」 「それだけのために私を誘うってどうなの。大体優希ちゃんだっているでしょ」 本当に心にもないことを言ってしまったと思う。 最近はいつもこんな感じだった。 きっと自分とは違って積極的にアプローチ出来る優希ちゃんが羨ましいのだと思う。 また、最近京ちゃんは、優希ちゃんばっかりに構ってるからむしゃくしゃしているのかもしれない。 この良く分からない気持ちが「嫉妬」なのかな? それに、優希ちゃんはことあるごとに京ちゃんに抱きついたりアプローチしている。 私も優希ちゃん以上のアプローチをしないと優希ちゃんに京ちゃんを取られてしまうかもしれないというのは分かっている。 だけど、そうは言っても優希ちゃんが普段やっているような大胆なアプローチを自分がやっているのを想像すると、 (顔が熱くなってそれどころじゃないよぅ) 今の私はたとえば京ちゃんと手をつなぐことだってどきどきしちゃってそれどころじゃないと思うし、それ以外だって…… 要するに私は恥ずかしくて思い切ったことが出来ないということなんだ。 ――と、考えていると京ちゃんの 「あいつは和と弁当だろ、誘っても来ないって」 という言葉で現実に引き戻される。 私は、今日は京ちゃんと2人っきりと言う事実に少し嬉しく感じながらも、京ちゃんの口から出た「和」という単語についてまた考え込んでしまう。 (そうだよね、京ちゃんは原村さんのことが好きかもしれないんだ) ことあるごとに京ちゃんが原村さんのことを見て顔をにやけさせていることに私は気づいていた。 気になる相手のことだからこそ。 そしてさらに、京ちゃんが原村さんの大きいおっぱいばっかり見ていることも知っていた。 (きっと、京ちゃんはおっぱい大きい方が好きなんだろうな……でも、私原村さんみたいにおっぱい大きくないし…きっと私はまだこれからだと思うんだけど………そうだと良いんだけれど…) もしかしたら京ちゃんは大きなおっぱいが好きなだけで原村さんが好きなわけではないのかもしれない。 だけれども、それはそれでおっぱいの小さい私には大きな危機といえた。 ――と、京ちゃんが私の顔をのぞき込んで不思議そうに聞いてきた。 「咲…?どうしたんだ、急に黙ったりして」 「ううん、何でもないよ」 「よし、それなら食堂に行くぞっ」 「あっ、待ってよ京ちゃん!」 「早く来ないと置いてきますよ?」 「むー、私がいないと京ちゃんはレディースランチが食べられないんだよ!」 「おっと、そうだったな……じゃあ行きますか、お姫様?」 京ちゃんがかしこまって手を差し伸べてくる。 「っ~~、ホントに調子良いんだから!」 少し。 少しだけ。 ほんの少しだけ京ちゃんに「お姫様」って呼ばれたことににドキッとしちゃったことは、 ……秘密なんだよ? * 「原村さんは好きな人とかっている?」 部長の「さあ、全国大会まで残すところ1ヶ月よ! 今日も張り切って打ちましょう!」という言葉で始まった本日の部活も終わって、原村さんと一緒に家に帰っているときに私は思い切って聞いてみた。 本当はこういうことに詳しいのは部長や染谷先輩なのかもしれないけど、部長は妙に勘がいいし、染谷先輩は家の手伝いがあるって言って部活が終わってすぐに帰ってしまったから聞けなかった。 「す、好きな人ですか!?」 「うん、そう」 「わ…私は宮永さんのこと好きですよ」 原村さんは何故か顔を真っ赤に染め上げて、とても小さい声でまるで絞り出すようにそう答えた。 (違うんだよ、原村さん。その“好き”は友達としての“好き”だから、私が今抱え込んでるものじゃないの) 私は原村さんがそういう反応を返すかもと、予想していたし、だからこそ初めからだめでもともと感が有った訳だけど、 やっぱり頼りにしていた原村さんが見当違いの答をしてきたことに、少しがっかりしてしまった。 でも、私はそれをあからさまに表に出すと原村さんを傷つけてしまうと思ったから心の中でため息をつきつつも、原村さんに返した。 「ありがとう、原村さん。私も原村さんのこと大好きだよ」 * チャプン…… 「はあぁぁ~…」 家に帰って入浴中。 そこでも私は悩む。 ……なんか最近私、毎日お風呂の中で悩んでばかりだな、と思った。 それは毎日のぼせてしまうほどで、ついには3日前お父さんに「長風呂はあまり体に良くないんだぞ」と怒られてしまった。 だが今日、明日、明後日はお父さんが出張で家にいないので、心置きなく長風呂する事が出来る。 それは私にとって誰かに邪魔されないで独りで考えることが出来る時間があるということに等しく、とても都合がいいことだった。 …とは言ってもやはりこればかりは何分悩んでも、何時間悩んでも、何日悩んでも、簡単に答が出るものではなかった。 「京ちゃん…私どうすればいいの…」 と、私の手ははいつものように自分のおっぱい、その大きさに少しだけ自信のないおっぱいに伸びて、揉み始める。 初めはゆっくり、撫でるように、ほぐすように揉む。 そして私は、その頂点にあるピンク色の突起に触れた。 「んっ……」 まるで微弱な電流が走ったような気持ちよさに思わず声が出そうになって、私は慌ててその声を押し殺そうとするけれど、 すぐに今日はお父さんがいないためその必要はないことに気が付いて、本能に任せることにする。 「ふあっ…………っんあ!」 私は、今自分の乳首を押したり引っ張ったりしているのは京ちゃんの指だというふうに考える。 そう考え始めだした瞬間、体を流れていた微弱な電流はいつしか微弱ではない、今までよりひときわ強いものになった。 だから、私の想像の中の京ちゃんがいじり初めてすぐに私の乳首はとても固く尖り初めていた。 自分でも比べる人がいないのでよくは分からないけれど、きっと感じやすい体質なのだと思う。 「んっ……ふあっ……っあ」 ついには、そろりそろりと私の想像の中の京ちゃんは指を私のおま○こに伸ばす。 そして、その指がおま○こに触れた瞬間、 「んああぁっっ……!!」 今までとは比べものにならないほど大きく強く鋭く、そして何よりも気持ちいい電流が体を駆けめぐる。 私のおま○こはお湯の中でも分かるぐらいに濡れていて、京ちゃんがそこをかき回すとお湯の中なのに私の耳にグチョグチョという、いやらしい音が響くほどだった。 「ふあっあっ、んああっ……きょ、ちゃん…激しすぎるよぅ……っあ!」 今度は京ちゃんは無我夢中で私のおま○こをなめ回している。 お湯の中とかそういうこともお構いなしだった。 舌を挿れたり、クリトリスを吸ったり、私の感じるポイントを狙って攻めてくる。 「ゃやあぁぁ……っ!」 ……やがて、私は自分の絶頂が近づいているのを感じた。 京ちゃんは自分のおち○ちんを取り出すと、私の中に強引に押し込んでピストン運動をする。 十秒ともつことなく、私はすぐに絶頂に達してしまった。 「んあああああああ…………っっっっ!!」 この瞬間、この一瞬だけ私は幸せな気持ちになることが出来る。 しかし、その一瞬が過ぎれば、私と毎日幸せな日々を送っている京ちゃんは消えて、私の中には果てしない虚無感が残るのみとなってしまう。 「…………京ちゃぁん……」 例え毎晩毎晩、何度自分を慰めてもその想いは満たされない。 そして私は絶頂の後の束の間の幸福感を求めて夜な夜な自慰、オナニーに走ってしまうのだった。 * しばらくして、絶頂後の倦怠感が無くなった私は自分の愛液で汚れてしまったお湯を捨てて(こういうのってなんか恥ずかしいよね)、パジャマに着替えると自分の部屋に戻った。 ベッドに飛び込んだ私はしばらくぼぅっとしていたが、浮かんで来るのは私の名前を呼ぶ京ちゃんばかり。 『咲、お前また寝てたのか?』 『それでな、咲。レディースランチが旨そうなんだよな』 『咲、お前麻雀出来るの?』 咲、咲、咲―――頭の中で京ちゃんがその名前を呼ぶ。 それは、いつまでも消えることないように思えたが、だんだんと小さくなっていき…遂には消えてしまった。 ――もっと。 もっと私の名前を呼んでほしい。 その力強い低めの声で「咲」って呼んでほしい。 いつの間にか、私は自分の瞳から水滴が零れ落ちるのに気付いた。 私、こんなに京ちゃんのことが好きだったんだ。 幼なじみの男の子。 小さい頃からよくお姉ちゃんを入れた3人で遊んでて。 だけど、今まではっきりと自覚したことはなかった。 この気持ちを。 愛を。 私は京ちゃん、須賀京太郎のことを愛している。 改めてそのことに気づかさせられる。 ――だけど。 消極的な私が京ちゃんと結ばれるなんて、そんな事は決してないのだろう。 そう思うと余計に哀しくなってきた。 「うっ、うっ……グス…京ちゃん……私、おかしくなっちゃうよぅ……」 私はたまらなくなってそう呟いてしばらくの間、俯いていた。 が、いつものようにやり切れなくなってしまい、やがてベッドの上で再び自分を慰め始めた。 京ちゃん、京ちゃんはきっと知らないよね。 私がいつもいつも読書中に寝ちゃってるのは毎晩毎晩、京ちゃんのことを想って自分を慰めるあまり寝不足になって、だからつい昼休みにうたた寝をしちゃうんだってこと。 私は、決して満たされることはないのを知っていながら、それでも何もせずにいられないから、自分を慰め続ける。 本当は、こんなこと考えずに今は全国大会1ヶ月前だし、お姉ちゃんと仲直りするためにも、また家族一緒に暮らすためにも、麻雀に専念した方がいいんだよね? しなくちゃいけないんだよね? ……でもね、それが出来ないの。いつ、何処にいても、何をしていても、貴方のことが気になるから。 頭から離れないから。 …………私…どうすればいいんだろう? ――ねぇ……京ちゃん? 1日目終了
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470 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 1/42016/01/26(火) 06 11 07.94 ID urE9Fw2X0 キオは学園で見かけたザンネックを追っていた。 (あのザンネック…ファラ先生がなんで…) ザンネックはちょうど敷地を出たあたりで停止し、学校にザンネック・キャノンの砲口を向けていた。 すでに攻撃の準備に入っているようで、両肩の粒子加速器が稼働している。 「待てえ!」 急ぎCファンネルを飛ばして攻撃する。 ビームはIフィールドにはじかれたが、それでこちらに気付いたらしくザンネックは砲撃の準備を中断した。 「おやおや。なかなか狩り甲斐のありそうな奴が釣れたもんだ」 「(ファラ先生の声! でも…違う!)」 「誰ですか、あなたは…いや、なんでザンネックに乗ってるんです。ファラ先生は…!」 あのパイロットは声こそよく似ているが、キオの恩師であるファラではない。キオはそう直感した。 「先生? …ああ、コッチの私は教員になってるのか。似合わない。処刑人は処刑人をやってりゃいいのにさ」 「何を言っているんですか…!」 「ああ、あんたにはわからない話だったか。まあわかったところで、私がお前の首を頂くことに変わりはない! この死神の魔手(デスイビルハンド)でね!」 戦略レベルの超長距離射撃を行えるザンネックだが、巨体と武器の取り回しの悪さにより接近戦には向かない。 組み付こうとすると、機体が何かにはじかれた。 「いきなり女に寄ってくるなんて悪い子だ」 ザンネックが何か持っていた。ビーム・サーベルの発振器のようなものから鞭状のビームが伸びている。あれではじかれたのだ。 「なんだ、あの武器…」 あんな武器をザンネックが持っているという話は聞いたことがなかった。 「便利だろ。ビームサイズにもビームランスにもなるんだ。――つまり!」 鞭を鎌に変えて、先ほどまで動かなかったザンネックが迫ってきた。 「うわっ!」 「お前のMSの首を刈り取ってやることもできるのさ!」 鎌が届く微妙な間合いに入り込んでビーム・サイズを振りかざすザンネック。意外な素早さに驚いたが、それも一瞬のこと。すぐに回避行動に移る。 「ははっ! この私、ファラ・グリフォンが処刑してやろう。お前も! あの学校の連中もねえ!」 名前まで同じ。キオの恩師と無関係とは思えなかったが、考えるのは後だ。 「処刑、処刑って。首をとることの意味をわかってるんですか、あなたは!」 「何を言ってる。首をとることに意味なんざないだろ!?」 ファラの言葉に、キオはぎりりと歯をかみしめる。 「あなたは、僕が止めてみせる!」 「止められるもんなら止めてみな、子供が!」 止めてみせる。決意を新たに、キオは攻撃を再開した。 471 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 2/42016/01/26(火) 06 12 20.99 ID urE9Fw2X0 数十分後。どうにかバズを撃破したアセムは、応援にやってきたシロー率いる警官隊にその場を任せ 損傷したダブルバレットでキオの元へとたどり着いた。悪い予感は当たり、ザンネックとAGE-FXが戦っていた。 両者とも素早く動き、攻撃の応酬を繰り返している。 「(援護は無理か…!)」 援護しようにも、あの中に割って入るのは無理だ。AGE-FXに当たってしまう可能性もある。 歯がゆい思いをしながら、目の前の戦闘を見守る。隙を見つけたらすぐに攻撃に移れるように。 戦いながら、ファラは違和感を感じ取っていた。先ほどから頭の中にノイズのようなものが走っている気がするのだ。 気のせいと決めつけていたが、ノイズはどんどん大きくなり、ついには言葉となって、ファラの脳裏に走る。 『ファラ先生が言ってた。首っていうのは、戦士にとって取るほうも取られる方も誉れの高いことなんだって 首を取られるってことは、それだけその人が評価されていたってことの証なんだから』 ファラが戦っているパイロット――キオの声だった。 「なんだこれは…頭に直接訴えかけてくる…!?」 『あと、神様への捧げものとして人の首の代わりに使うために生み出されたのが饅頭だっていうことも教えてくれた。 饅頭は生贄に使う人間の頭の代わり。つまり命の代わりだったんだ』 AGE3-FXがサーベルで切りかかる。 「だから――どうした!」 ザンネックはビーム・サイズで器用に受けて、また離れる。 「首は、いや人間はそれだけ尊いものなんだ! それをわからず首を取るあなたは僕の尊敬するファラ先生じゃない! ただのファラ・グリフォンだ!」 「ああそうさ、私はファラ・グリフォンさ! 無感動に人を殺して何が悪い!? "こっち側"の私など知ったことか! 私は処刑人の、人殺しの家系に生まれたファラ・グリフォンなんだよ!」 ビーム・ランスを突き出す。横に避けたところで、ビーム・サイズへと切り替える。AGE-FXの左足を切断した。 しかしAGE-FXはそんなことは構わないとばかりに戦い続け、今度は通信に乗せて声を届ける。 「親が…先祖が、家系がなんだっていうんだ! 子が親の業を背負うなんておかしいよ! あなたは、自分の劣等感にその道を選ばされただけじゃないか!」 「キオ…」 戦闘を見守るアセムの胸を、ちくりとした痛みと悲しみが走った。理由はわからない。 それは日登商店街でXラウンダーの能力を使いキオの言葉を聞いていたフリットも同様だった。 「父さんや母さんは何してるか知らない! でも、兄さんたちはいろんな道を歩んでるんだ! 僕はただのゲーム好きの子供で、将来のことなんか知らない! 学校や遊びのことで頭がいっぱいだもの!」 「MSに乗って、ザンスカール軍中尉の私に食らいつく貴様が、ただの子供!? 寝ぼけたことを言うな!」 472 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 3/42016/01/26(火) 06 15 03.54 ID urE9Fw2X0 「寝ぼけてなんかあるもんか! Xラウンダーなんていうワケわかんないものだって言われた。お前は凄いって何度も言われた。 でも、それでも僕は――普通の子供だ! 大人でも神様でも超人でもないんだ!」 激情に身を任せ、FXバーストを発動。勢いと見た目に怯んだファラのビーム・ランスを軽々と避けて、ザンネックへと抱き着いた。 「くっ…!」 「取ったッ!」 機体のあらゆる場所から吹き出すサーベルを使ってコックピット以外の場所にダメージを与えながら、右腕のサーベルを使って頭を切断。 間違ってコックピットに攻撃しないように、すぐにバーストモードを切る。 「頭を取ったって…私はまだ動けるんだよ!」 「それでいいんだ!」 ボロボロになりながらも反撃を試みるザンネックに対して、ブースターを全開にして渾身の体当たりをかける。 視界とバランスを失い体勢が不安定になったザンネックは、その衝撃でSFSから叩き落された。 「私が、子供に…!?」 その言葉とともに地上へと落下していくザンネック。全身にダメージを受けている状態で落下の衝撃を受ければ、もう動けないはずだ。 「ふぅ…」 コックピットの中で、キオは大きく息をついた。SFSはまだ生きていたが、遠隔操作される恐れがあるので念のため破壊しておいた。 「キオ!」 「ダブルバレット…アセム兄ちゃん…」 体を強い倦怠感が襲っている。キオは思いのほか疲れていた。 「学校は…?」 「ファラ先生とシロー兄さん達が頑張ってる」 「そっか…じゃあ、行かなきゃ…」 「え?」 AGE-FXを地上に降ろして、先ほどザンネックが落下した場所へと向かう。 「キオ!?」 予想外の行動をした弟を追い、アセムも地上へと降り立った。 キオの予想通り、ザンネックは機能を停止していた。外側からハッチを開く。 「大丈夫ですか?」 中のパイロットに手を差し伸べる。顔も体格もファラそっくりだった。違うのは鈴の飾りがないことと、額の奇妙なマークくらいか。 「…敵に情けをかけるっていうのか」 「戦いは終わったんだから敵も何もないでしょう。…アセム兄さん、引き上げるからちょっと手伝って!」 「あ、ああ…」 アセムの助けを借りて、ファラの右腕を強引につかんで引き上げる。特に暴れるようなこともなかった。 473 光の翼番外編 日登町防衛戦(6) 4/42016/01/26(火) 06 19 55.05 ID urE9Fw2X0 「お前たちは…一体なんなんだ?」 「言ったでしょ、ただの学生」 「同じく」 「あ、怪我してる!」 ファラは左肩から血を流していた。落下の衝撃で変形したコックピットの部品が刺さったらしい。 引き上げたときに暴れなかったのは、この怪我が影響していたようだ。 キオはポケットから消毒用のスプレーと止血用のテープを取り出し、消毒した傷口に貼った。 「こんな状況じゃ病院もやってないだろうし…とりあえず、これで我慢してくださいね。 シェルターまで行けば、たぶんちゃんとした治療を受けられると思いますから」 「なぜ、敵にそんなことをする…自分に害をなすかもしれないというのに」 言われてからキオははっとなった。 「…そこまで考えてなかった」 ばつの悪そうな顔で言うキオにファラが苦笑し、立ち上がった。 「私の負けだね」 「え?」 「テロ屋の真似事はもうヤメにする。で、警察に出頭してやる。それでいいんだろ」 「あ、はい…」 「なんで急に素直に…」 アセムの疑問には答えず、ファラはキオをじっと見つめた。 「あんたの馬鹿さと強さ、優しさに…どうにも惚れてしまったらしい。惚れた男の頼みは聞いてやるのが女ってものさ」 キオに向け、ファラが妖艶に微笑んだ。あまりの色気に流石のキオとアセムが一瞬どきりとし、しばらくファラが言ったことの意味を理解できなかった。 「いつかまた、会えるのを楽しみにしてるよ。キオ。デートの誘いはいつでも受けつけてるからね」 硬直する二人を後目に、手をひらひらと振りながらファラが去っていく。そして、ようやく言われたことの意味を理解した二人は。 「「えええええええ!?」」 二人そろって絶叫。混乱のあまり、結局あのファラが何者なのか聞くのをすっかり忘れてしまっていた。 link_anchor plugin error 画像もしくは文字列を必ずどちらかを入力してください。このページにつけられたタグ アセム・アスノ キオ・アスノ ファラ・グリフォン マンガバン 光の翼 光の翼番外編 長編
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もう潰れてしまった海沿いのライブハウス。 とても小さなハコで、数回しか行ったことはないが、僕はあの場所を一生忘れないだろう。 彼女の歌をはじめて聞いたのはもう4年前になる。 その日ライブハウスに行ったのは本当にただの気まぐれだった。通りがかりに「オープン10周年記念ライブ」という告知を見かけ、知っているバンドの名前もあったので、暇だし見ていくかと思ったのだ。 格好つけてキューバ・リブレを飲みながら、フロアの後ろに据えつけられた席で轟音に耐えていたら(そのライブハウスは僕の好みよりすこし音が大きかった)、――突然その声は降ってきた。 彼女の歌は倦怠感にまみれ、それでいてくすぶるような熱を帯びていた。高音で少し混ざる金属音。かすれるように響く低音。マイナスと思われるような要素も魅力に変えてしまう、彼女の声にはそんな力があった。僕はグラスを右手に握りしめたまま、その音に聞き入っていた。 彼女の名はMEIKOと言った。 MEIKOのバンドはすでになかなか人気があったようで、精力的にライブ活動もしていた。僕はそのひとつひとつのライブに行った。もともと音楽はキライじゃない。けれど、僕は彼女と出会わなければ音楽をやろうとは思わなかっただろう。バンドを組むとき、必要以上に女性ボーカルにこだわったのも彼女の影響だったのだと思う。「もし俺たちが有名になって、」その頃は結構本気でそんなことを考えたものだ――「影響を受けたアーティストを聞かれたら、彼女の名を出さなければ」。 彼女の声はすばらしかった。そしてその声をすばらしく生かす楽曲。いつしか僕は新曲が出るたびに悔しいと思うことが多くなった。自分にはこんな曲は書けやしないし、自分にはMEIKOもいない。なぜこのバンドはこんなにも恵まれているのだろう。最高の楽曲を作る人間がいて、それを最高に再現するボーカリストがいる。 彼女に顔を覚えてもらうのにそれほど時間はかからなかった。毎回ライブに顔を出す人間を覚えるのは容易いだろう。最初のうちは恥ずかしくてとても彼女と話すことなんて出来なかったが、いつしかライブ後に彼女や、彼女のバンド仲間と言葉を交わしたりするようになった。 話すことはほとんどが他愛無いことだった。彼女はいつも話題の中心にいたが、僕はその周縁で静かに話を聞いているだけだった。もしかしたら、直接話したことはほとんど無かったのかもしれない。何かの拍子に二人きりになったときなど、話すことがなくてとても困った覚えがある。周りを取り巻くファンが熱い思いを彼女に伝えていても、僕はただそれを眺めているだけだった。 結局僕と彼女が関わるのは、ライブがあるときだけだった。僕は彼女のライブが終わればその次のライブを心待ちにした。ロクに更新されない彼女のバンドのホームページに毎日のようにアクセスし、他のファンから情報をかき集め、とにかくひとつのライブも逃さないように必死だった。 だから、ライブの回数が極端に減りだしたとき、僕はすぐに気づいた。本当に少しずつ緩慢に、彼らの活動は停滞していった。僕にはどうしようもないことだ。彼女に会える機会はどんどん少なくなっていった。 最後のライブのことは今でも覚えている。僕はまだ認めていなかったし、彼女たちも表層的には認めてはいなかったが、すでに終焉は始まって久しかった。しかし、その時にはこのライブが本当の終焉になるとは思ってもみなかったし、彼ら自身にもそのつもりはなかったと思う。なにしろその日は久しぶりに新曲が演奏されたのだから。それはこれからもこのバンドを続けていくのだという意思の表れだったはずだ。 「アルニコ」と銘うたれた新曲の最初の音を聴いた瞬間、喉の奥がぎゅっと締まるような感じがした。穏やかにはじまって急に変わる曲調。僕は何か日常の中で降り積もったやるせなさと、うつくしい風景を両方同時に見せられたような心地がして、腹の底が熱くなるのを感じた。 その曲が、僕が最後に聞いたMEIKOの歌だった。その後一度のライブのアナウンスもないまま何ヶ月かが過ぎ、ある日いつものようにバンドのページにアクセスすると、解散のお知らせが載っていた。 それきりMEIKOと会うことはなかった。結局僕と彼女は顔見知り以上ではなく、ライブというつながりがなくなればそれでおしまいだ。あの日一度だけ聞いた「アルニコ」は、もうどんな曲だったか思い出せはしない。ただ、あの強烈な印象だけが僕の心の中に今も残っている。 4年経った今、僕のバンドもまた解散の危機を迎えていた。複数の人間が同じ目的と目標を保ち続けるのは難しい。いろんなことがずれていき、身動きが取れなくなっていく。嘘くさいと思い続けてきた「音楽性の違い」というのも、こうなってみるとあながち嘘でもないと思った。 このバンドがなくなってしまったら、僕は音楽を続けていけるだろうか。そしてそう考えはじめるといつも、僕はMEIKOのことを思い出す。彼女は今もどこかで音楽をしているのだろうか。 夕暮れの街を歩きながら、僕はあの「アルニコ」を再現しようとしていた。もちろん思い出せもしない原曲そのものではなく、僕の中に残ったあの印象を再現できるような曲を作ろうとした。そんな曲が実際に作れたとして、バンドではもう演奏できないかも知れなかったが。 走り抜けていく自転車、風にざわめく街路樹、子どもの手を引いて家路に着く母親。そう、あれはこういった日常の中から生まれくるようなメロディーだった。それでいて焼け付くような熱を秘めた曲。 前を歩く母親が、子どもにせがまれて歌を歌い始めた。聞こえてきた声はとても優しく、夕暮れの街並みに溶け込むようだ。はじめて聞くはずの音楽なのに、なぜかとてもなつかしい。僕はすぐそのメロディーに、声に引き込まれた。 低音で少しかすれる歌声、少し耳につく高音。 僕は強烈なデジャヴに襲われた。歌い方はまるで違う。僕の記憶にある声はもっと鋭さを秘めた声だった。だけど聞けば聞くほど、その声には聞き覚えがあった。 「MEIKOさん!」 全く今考えてみても、どこにそんな勇気があったのかと思う。けれど、さまざまな不安よりも「ここで声をかけなかったらきっともう会えない!」という気持ちの方が強かった。 彼女はびっくりしたように振りかえると、僕の顔を見て不思議そうな顔をした。 「あ、あの…」 途端に僕は口ごもってしまってうまく喋れなくなった。彼女は僕なんて覚えてないに違いない! 「昔バンドをしてらっしゃった頃に…ファンで…」 「ああ!」 彼女はそう言うとうれしそうに笑った。 彼女が本当に僕のことを思い出したのかはよく分からない。しかし 「ホントーに久しぶりね!」 と喜んでくれた。 僕たちは近くの公園に入って、子どもを遊ばせながらベンチに座って話した。こんなに近くで彼女の横顔を見たことがあっただろうか。彼女の顔は記憶のままに美しかった。 「かわいいお子さんですね」 「憎たらしい盛りよ~! ホントに毎日大変!」 そう言いながらも子どもを見る彼女の目はとても楽しそうだった。 「MEIKOさんはもう、音楽はやってないんですか?」 「うーん、そうねえ。バンドが解散してからしばらくはいろいろ探したりもしたんだけど、あの子が生まれちゃってね。やめようと思ってやめたわけじゃないけど、気づいたらやめちゃってた。あなたは……音楽をやってるのね」 彼女は僕の持っていたギターケースを眺めてそう言った。 「ええ…まあ……」 「なに? はっきりしない返事ね!」 彼女はそう言うとじれったそうに身を揺すった。MEIKOはもう少し落ち着いた人間だった気がするが、まあ4年もあれば変わるものだろう。 僕は自分のバンドが解散に危機にあることを話した。そして解散した後自分は音楽をやっていけるのかどうか不安なことを。 話しているうちになんだか僕は不思議な気持ちになってきた。なぜ僕はそんなに音楽をやることに固執しているのだろう。そもそも解散の話が出るまでの僕はそんなに真剣に音楽をやっていなかった気がする。それがいざこうなってしまったら必死でしがみつこうとして。 なんだか滑稽だ。 「昔はプロになりたかったんだ。だけど結局自分の実力のなさや、やる気のなさのせいで、夢は夢のまま終わってしまった。なのに必死でその残滓にまだ縋っているなんて、おかしいですよね」 僕がそう言うとMEIKOはしばらく黙った後に 「それでいいんじゃない?」 と軽く言った。 「作りたいものがある、表現したい気持ちがあるっていうのは幸せなことよ。たとえ、それが多くの目に触れなくてもね。その手段を失うかもしれない、っていうのはツライわ」 わたしだってそうだったもの、と彼女はぽつりと小さくつぶやいた。 僕たちはしばらく黙ったまま、落ちていく夕日と伸びた影を眺めていた。 彼女はまたさっきの歌を口ずさみはじめた。僕はしばらくその歌をひき込まれるように聴いていた。しかし穏やかに紡がれていた旋律は、途中で突然曲調を変えた。そこで僕ははじめて気づいた。 ああ、これはあの「アルニコ」ではないか! 急にあのライブの情景が思い出されてきた。確かにこの曲だ。当時の感動が鮮明によみがえってきた。 あの頃からだいぶ遠くまで来たような気がする。ただ同じような日常を繰り返してきただけなのに。昔と今ではずいぶんいろんなことが変わってしまった。僕自身も変わってしまったし、彼女も変わった。それでもこの曲は、今でも僕の心を掻きたて、焦燥感を煽る。 結局夢なんか叶わないのかもしれない。バンドだってもうどうにもならないのかもしれない。でも、僕にはやはり、捨てきれないものがある。 「MEIKOさん!」 彼女が歌い終わったところで、僕は叫んだ。 「あなたに、僕の曲を歌ってもらいたい!」 彼女の声はやはり今でも僕を駆り立てる。僕が思わず言ったそのことばに、MEIKOはそっと微笑んだ。 「そうねえ、あなたが本気ならやってあげてもいいわ」 「本当ですか?」 「そうよ、本当に本気ならね。わたしを歌わせるのはそう簡単じゃないんだから! あきらめないでやる自信あるの?」 なぜだろう、その時僕はものすごく自信を持てた。技術的な問題はきっと乗り越えていける。彼女の声があれば。 「大丈夫です!」 このしょうもない世界で、僕は足掻こう。彼女の声がきっと、そのための力をくれる。